名前ちゃん。現実逃避したい。
徹夜で、キャロルと一緒に粘土版の修復作業をした。
妹のために、お姉ちゃんがんばった。
終わらなかったけど、とりあえず学校行こうってなったところまではいい。いいんだよ。
「わたくしの名はアイシス…。ただ一人の弟がどこかへ行ってしまって…困りはてているのです。」
そんな私の目の前には、黒髪黒瞳美人さん。
あれ。私の元姉と同じ名前ですね。
そして私の元姉にくりそつですね。
名前ちゃんびっくり。
それにしたって、ネグリジェ姿セクシーいやん。
………なんでここにいる。元私の姉。
とりあえず、私のことはバレてないみたいだし、スルーでおーけー。
ロディ兄さんとキャロルがなんか軽口叩いてる横で、私は無心になって空を見る。
アイシスが私を見て、金の瞳…とか呟いてたのは全力で気にしない。
すると、窓の外からジミーたちが私たちの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「あら?ジミー、マリアにハッサンもどうしたの?」
「大事件だ!キャロル、ソフィア!王のミイラが盗まれたんだよ!」
「な、なにーっ!!!」
あ、やっぱり王の墓ってメンフィスのだったのか。
アイシスが思いっきり立ち上がって驚いたことによって、知りたくもない事実が私の頭の中にインプット。私は涙目。嘘だけど。
私の表情筋は職務怠慢で有名なのよキリッどやぁ。
▽
そして私は現在、つい先日発見された王の墓の前。
そりゃぁ、さすがに可愛い妹に「一緒に行こう…?」なーんて言われたら選択肢は一択だよね。
シスコン?妹を可愛がってなにが悪い。
うん。でも、それが間違いだって気付いたよ。甘やかしいくない。
「し、し、死体!!きゃーっ!殺されてる!!」
「きゃーっ!!恐いっ!!!」
「にげろーっ!!」
ジーザス。
キャロルの叫びに、みんなが散り散りになって叫びながら逃げ惑う。
私はというと、キャロルに手を引かれ真っ暗な闇の中にいた。
キャロルェ…
「ぁ、あ、ナマエ……、」
『大丈夫。キャロル。ここにいるよ。』
「恐い…恐いわ…!」
カタカタと震えるキャロルの手をギュっと握って、闇に目が慣れるまで、キャロルに話しかけ続ける。
闇に目が慣れてくると、なんか人がたくさん描かれた壁画に囲まれた部屋に私たちはいた。
『ここ…』
「こ…ここはお墓の中!」
『!』
その言葉にイヤな予感が私の頭を過る。
いや、でも、まさか…
「きゃぁっ!!」
『キャロル?どうしたの?』
「目……目が…!」
『目?』
キャロルの見ている方向に目を向けるとあら不思議。
何故だか壁画の絵と目がぱっちりあった。
ぇぇえええ…
どこのホラーだよ。
「はなしてっ!!はなし…!あ…あれは…!」
『………うそ。』
のんきにそんなことを考えている間に、私とキャロルの体が壁画から出てきた絵に抱えられる。
そこで見たものに、本当に眩暈がした。
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bkm