黄金に手を伸ばす 2


名前ちゃん。現実逃避したい。


徹夜で、キャロルと一緒に粘土版の修復作業をした。
妹のために、お姉ちゃんがんばった。

終わらなかったけど、とりあえず学校行こうってなったところまではいい。いいんだよ。


「わたくしの名はアイシス…。ただ一人の弟がどこかへ行ってしまって…困りはてているのです。」


そんな私の目の前には、黒髪黒瞳美人さん。

あれ。私の元姉と同じ名前ですね。
そして私の元姉にくりそつですね。
名前ちゃんびっくり。

それにしたって、ネグリジェ姿セクシーいやん。

………なんでここにいる。元私の姉。

とりあえず、私のことはバレてないみたいだし、スルーでおーけー。

ロディ兄さんとキャロルがなんか軽口叩いてる横で、私は無心になって空を見る。

アイシスが私を見て、金の瞳…とか呟いてたのは全力で気にしない。

すると、窓の外からジミーたちが私たちの名前を呼ぶ声が聞こえた。


「あら?ジミー、マリアにハッサンもどうしたの?」
「大事件だ!キャロル、ソフィア!王のミイラが盗まれたんだよ!」

「な、なにーっ!!!」


あ、やっぱり王の墓ってメンフィスのだったのか。

アイシスが思いっきり立ち上がって驚いたことによって、知りたくもない事実が私の頭の中にインプット。私は涙目。嘘だけど。

私の表情筋は職務怠慢で有名なのよキリッどやぁ。





そして私は現在、つい先日発見された王の墓の前。

そりゃぁ、さすがに可愛い妹に「一緒に行こう…?」なーんて言われたら選択肢は一択だよね。

シスコン?妹を可愛がってなにが悪い。

うん。でも、それが間違いだって気付いたよ。甘やかしいくない。


「し、し、死体!!きゃーっ!殺されてる!!」
「きゃーっ!!恐いっ!!!」
「にげろーっ!!」


ジーザス。
キャロルの叫びに、みんなが散り散りになって叫びながら逃げ惑う。
私はというと、キャロルに手を引かれ真っ暗な闇の中にいた。

キャロルェ…


「ぁ、あ、ナマエ……、」
『大丈夫。キャロル。ここにいるよ。』
「恐い…恐いわ…!」


カタカタと震えるキャロルの手をギュっと握って、闇に目が慣れるまで、キャロルに話しかけ続ける。

闇に目が慣れてくると、なんか人がたくさん描かれた壁画に囲まれた部屋に私たちはいた。


『ここ…』
「こ…ここはお墓の中!」
『!』


その言葉にイヤな予感が私の頭を過る。
いや、でも、まさか…


「きゃぁっ!!」
『キャロル?どうしたの?』
「目……目が…!」
『目?』


キャロルの見ている方向に目を向けるとあら不思議。
何故だか壁画の絵と目がぱっちりあった。

ぇぇえええ…
どこのホラーだよ。


「はなしてっ!!はなし…!あ…あれは…!」
『………うそ。』


のんきにそんなことを考えている間に、私とキャロルの体が壁画から出てきた絵に抱えられる。

そこで見たものに、本当に眩暈がした。


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