金盞花に哭く 9


光の中、私はとても幸せだった。
幸せで幸せで、幸せで、幸せ、で、


「どうした、名前。」


シロくんがいて、


「名前ーっ!」


乱菊ちゃんがいて、


「名前ちゃんっ」


桃ちゃんもいる。


これが私の幸せ、で、?

あれ?私は何か見てはいけないものを見なかったっけ?

あれ?私は誰か好きな人がいなかったっけ?
誰かを、すごく慕っていなかったっけ?

まるで、絵画のような風景。

太陽が光り輝く広い草原で、みんなはニコニコと笑っている。


幸せ。幸せのはずなのに、何か違和感。


手を、伸ばす。
触れたくて、それが本物だと信じたくて。

でも、

『ぇ…、』

パリンッ

そんな音がして風景が壊れる。

頭に、真っ黒な記憶。
思い出したくない、思い出したらいけない。
でも、記憶が私に流れ込む。

必死で、手を伸ばす。
ボロボロな私の片割れに手を差し伸べる彼に。
けれど、それは叶わなくて。

黒い、闇のような感情が私の胸を燻る。

あの子じゃなくて私を見て。
あの子に笑顔を見せないで。
私だけに優しい言葉をちょうだい。
あの子が、いなくなれば、

私を愛して。


醜い感情。
耳を塞いで、心の中に閉じこもって、見ないように、聞かないようにしてきた感情。


自分の姉に、憎しみしか抱けない私は最低。最悪。
彼に愛をもらえない私はいらない。不必要。


『(あ、そっか。)』


そう、理解した瞬間に、私は、





松本Side

あれから三日経った。
目覚めない。名前が、目覚めない。
虚にやられた毒は消えた。

それなのに、

「あんたは…、私に心配かけすぎなのよ…!」


まるでお伽噺に出てくるお姫様のように眠る名前に、涙が零れそうになった。


一週間が経った。

ガラリと扉を開け、名前の病室に入る。
すると、名前がおきあがってた。


「名前!!」
『………』
「よかった、本当に、よかった…!!」


嬉しくて、嬉しくて、ギュッと名前の身体を抱き締める。
いつもだったら名前はどんな時でも、あたしを抱き締め返してくれる。

けど、

『……』
「名前……?」


目が覚めた彼女は闇の中だった。


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bkm
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