光の中、私はとても幸せだった。
幸せで幸せで、幸せで、幸せ、で、
「どうした、名前。」
シロくんがいて、
「名前ーっ!」
乱菊ちゃんがいて、
「名前ちゃんっ」
桃ちゃんもいる。
これが私の幸せ、で、?
あれ?私は何か見てはいけないものを見なかったっけ?
あれ?私は誰か好きな人がいなかったっけ?
誰かを、すごく慕っていなかったっけ?
まるで、絵画のような風景。
太陽が光り輝く広い草原で、みんなはニコニコと笑っている。
幸せ。幸せのはずなのに、何か違和感。
手を、伸ばす。
触れたくて、それが本物だと信じたくて。
でも、
『ぇ…、』
パリンッ
そんな音がして風景が壊れる。
頭に、真っ黒な記憶。
思い出したくない、思い出したらいけない。
でも、記憶が私に流れ込む。
必死で、手を伸ばす。
ボロボロな私の片割れに手を差し伸べる彼に。
けれど、それは叶わなくて。
黒い、闇のような感情が私の胸を燻る。
あの子じゃなくて私を見て。
あの子に笑顔を見せないで。
私だけに優しい言葉をちょうだい。
あの子が、いなくなれば、
私を愛して。
醜い感情。
耳を塞いで、心の中に閉じこもって、見ないように、聞かないようにしてきた感情。
自分の姉に、憎しみしか抱けない私は最低。最悪。
彼に愛をもらえない私はいらない。不必要。
『(あ、そっか。)』
そう、理解した瞬間に、私は、
▽
松本Side
あれから三日経った。
目覚めない。名前が、目覚めない。
虚にやられた毒は消えた。
それなのに、
「あんたは…、私に心配かけすぎなのよ…!」
まるでお伽噺に出てくるお姫様のように眠る名前に、涙が零れそうになった。
一週間が経った。
ガラリと扉を開け、名前の病室に入る。
すると、名前がおきあがってた。
「名前!!」
『………』
「よかった、本当に、よかった…!!」
嬉しくて、嬉しくて、ギュッと名前の身体を抱き締める。
いつもだったら名前はどんな時でも、あたしを抱き締め返してくれる。
けど、
『……』
「名前……?」
目が覚めた彼女は闇の中だった。
prev next
bkm