“赤”がアリスお姉さんを染める。
赤い赤い、そういえば、アンジーちゃんのお父さんも赤く染まってた。
『ぁ、ぁ…、ゃ、だ、やだやだやだやだやだ!!!アリスお姉さん!アリスお姉さん!!』
ガタガタと揺れる機体の中で、私は必死に赤く染まってくアリスお姉さんを抱き締める。
やだやだ、アリスお姉さん死んじゃやだよう!!
ガタンッ、
機体が一際大きく揺れると、ヘリコプターは森を目掛けて落ちて行っていた。
すごい振動が私たちを襲う。
それにギュッと目を瞑りながら、アリスお姉さんとゲーム機を庇うように抱き締めていれば、私の上からまた何かが覆い被さってきた。
その被さってきたのを確認しようと目を開けようとするけど、機体の揺れがひどくて、アリスお姉さんとゲーム機を離さないように抱き締めているので精一杯。
大丈夫。アリスお姉さんは死なないもん。
アリスお姉さんは強いし、かっこいいし、可愛いし、優しいもん。
そんな人が死ぬわけないから。
だって、正義のヒーローは死なない、が鉄則って言ってた。
だから、私にとってのヒーローは絶対死なないの。
ぐるぐると機体が落ちていく中、私は泣きそうになるのを堪えながら、アリスお姉さんとゲーム機ををギュッと抱き締めてた。
最後に感じたのは強い衝撃。
▽
目を覚ますと、私たちがいたのは森の中。
アリスお姉さんもゲーム機も、私の腕の中にあったことに、すごく安心する。
『ア、アリス、おね、さ…、』
アリスお姉さんに話しかけようとすると、私の身体も、アリスお姉さんの身体も血だらけで、
どうしようどうしようどうしようどうしよう!!
このままじゃ、アリスお姉さんが死んじゃう、死んじゃうよ!!
「名前、」
『マットお兄さ、アリスお姉さんが…、死んじゃ、』
「もう、いい。」
『ゃ…、』
「アリスは、もう死んでる。」
それが聞きたくなくて、アリスお姉さんを抱き締めながら、私は縮こまる。
やだやだやだ、アリスお姉さんは死なないもん、
私のヒーローだもん。
たとえ、アリスお姉さんのお腹に、鉄柱が突き刺さってても、
アリスお姉さんは死なない!
『ぅぁっ、』
「名前、わかってるだろ…」
『ぅ"う"ーー…、』
優しく、マットお兄さんに抱き締められる。
でも、だって、
ギュッと唇を噛み締めて、涙が零れるのを我慢する。
泣いたら、アリスお姉さんとの思い出がどっかに行っちゃう気がして、
「名前、早くこの場から離れないと、奴らが来るの。わかって、くれるわよね…?」
優しく優しくジルお姉さんが、私の頭を撫でながら、諭すように話しかける。
マットお兄さんは、ギュッと、私を抱き締めてくれて、周りでみんなが私を待っててくれてるのが分かる。
苦しい、けど、アリスお姉さんはアンジーちゃんを守って死んだ。
だから、私は、みんなをアンブレラ社の人たちに渡しちゃいけない。
だって、アリスお姉さんが繋いでくれた命だと思うから。
私の命は、ネメシスさんがあの時、ゾンビに食べられるのから助けてくれたから、ここにある。
マットお兄さんの妹だって、死んじゃったけど、私は生きてる。
きっと、私は死んじゃ駄目。
アンブレラ社に捕まっちゃ駄目。
『アリスお姉さん、大好きだからね!』
ニコリと、アリスお姉さんが好きだって言ってくれた笑顔で笑う。
きっと、泣きそうな顔してたけど、アリスお姉さんは許してくれる。だって、アリスお姉さんだもん。
アリスお姉さんの手に、髪を縛ってた制服のリボンをギュッと握らせると、私はマットお兄さんに手を引かれて、森の中へ入って行った。
大好き、大好きだよ。
ネメシスさんも、アリスお姉さんも、
だから、私はちゃんと生きるからね。
二人が助けてくれた命は、大事に大事にするからね。
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bkm