金盞花に哭く 8


首から注射器のような形をした虚の尻尾が抜かれる。

最後の最後で油断するなんて、私って馬鹿だなぁ。

ゆらゆらと揺れる視界で、焦点のあっていない瞳で高笑いをする虚を睨みつける。


《ひゃはは!!やったぞ!この感触!!お前に一矢報いたぞ!!ひゃはは、》


虚の高笑いが消えた瞬間、私に差し伸ばされる手。
キュッとその手を使って立ち上がる。


「チッ…うるせぇ虚だな。大丈夫か、名前。」
『しゅ、へー、くん、』


こんなときでも、シロくんを望んでしまった私は愚か者なのでしょうか。


『ぁ、がと、』
「お、おい!名前!!」


グラグラ視界が揺れる中、見たのは、彼とボロボロな私の半身の姿だった。


必死に手を伸ばすけど、彼には届かない。

やっぱり私はシロくんの一番にはなれなくて、

彼とは一生一緒になれない運命なのかもしれない。


私の名前を呼ぶ声を聞きながら、ただ漠然とそう思った。


ただ、私はシロくんを好きでいられればよかった。
別に、付き合うとかじゃなくて。

私はシロくんの一番近い人でありたかった。
シロくんの好きな人が、桃ちゃんでも、私をシロくんの中に入れてくれるなら。
辛い時、シロくんがいてくれるなら。

でも、それはそもそも間違いで。

シロくんが最優先するのは桃ちゃん。
私じゃあない。

なんだ。私ったら、馬鹿みたい。

そんな当たり前のこと、今さら気付いた。

そこで私の何かが壊れた。


松本Side

虚討伐の収集を受けて、あたしと名前は集まった。
そこはすでに戦場で、倒れてるやつらも何人かいた。

けど、あたしは、名前以外どうでもよくて。
ただ、名前なら、生きて戻るだろうって思ってた。

だから、

「名前!!!」


何かに必死に手を伸ばしながら、崩れ落ちた名前を、檜佐木を押し退けて、支える。

あの子の視線の先には、隊長と雛森。

あぁ…、また、名前は傷付いた。


「っ、檜佐木!早く四番隊を、卯ノ花隊長を呼んできて!!」
「は、はい!」


死なないで、死なないで、

祈りながら、名前の身体を強く抱き締めた。


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