その日は、いつもと何かが違った。
空は暗雲が立ち込めていて、どんよりとした空気だった気がする。
「名前っ!ボーっとしちゃってどうしたのよ?」
『ぁ…、ううん。なんだか雲行きが怪しいなぁって思って。』
後ろからガバァッと、乱菊ちゃんに抱き締められる。
それにちょっとだけ驚いたけど、いつものことだから気にしない。
乱菊ちゃんの言葉に答えを返せば、私につられるようにして、乱菊ちゃんは空を見上げた。
「そうねぇ…そういえば、最近は流魂街にも虚が大量発生してるらしいわよ。」
『あ、それ知ってる。私のところの第三席の人も虚退治に行って、帰ってこないの。』
「そうだったの?通りで、四席のあんたが忙しくしてるわけだ。」
『…忙しそうだった?』
「えぇ。」
それに苦笑い。
忙しいって実感はなかったんだけどなぁ。
あ、でも、いつもより市丸隊長と話してた気がする。
そんなことを思いながら、乱菊ちゃんと話してると、地獄蝶が飛んできた。
【現在、尸魂界に虚が大量発生。全死神、直ちにその場へ向かえ。】
「……あーあ。あたし、今日は休みだったのに。」
『行こっか。』
運命の時が近付いていた。
▽
今でも思う。
もしも、あの時に虚が尸魂界に来なければ、わたしはまだ幸せだったのかな。
なんて、今さらでしかないのだけど。
『巡り廻れ春夏秋冬!』
真っ白だった刀にスッと四つの色が宿る。
目の前の虚を睨みつけると、即座に私は斬りかかった。
「雛森第四席!!」
『あなたたちは、私が斬った虚を倒してください!先ほどより、弱くなっているはずですから。』
名前も知らない死神に、そう言ってから虚に斬りかかる。
私の斬魄刀はサポート専門のようなもの。
卍解をすれば、もっと春夏秋冬だけでも倒せるけど、こんなに人が多いと、卍解はできない。
卍解ができることを言ってはいけない。それが、斑目さんとの約束だから。
《おぉ、女か!女はうまいから嬉しいのう!》
『…』
《なんじゃ、だんまりか?くく…っ!》
ベラベラとしゃべる虚に、斬りかかる。けど、かすった瞬間に、鈍器で殴られたような痛みを伴って、私の身体は飛ばされた。
『カハ…ッ、』
《なんじゃ、かすっただけじゃ。それにしても、人が話してる時に斬りかかるとは…!躾のなっとらん小娘…っ、》
『眠く、なってきちゃった?』
クスリ、身体の痛みを堪えて、唇で弧を描く。
私の近くにはすでに、この虚一匹だけ。
『私の斬魄刀の能力は、眠気と幻覚、乾き、身体能力の低下、身体を凍らせる、その四つの能力が、かすっただけでも出せる能力なの。』
《うがっ、ぁぁあ!!小娘が!小娘ごときが!!》
ブンブンと、違う方を殴っている虚。
幻覚にやられちゃったみたい。
もうすぐで、永遠の眠りに入る。
フラッと、先ほどの痛みで身体が倒れそうになる。
それを踏ん張って立ち直せば、ドスリ、何かが身体に突き刺さった。
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bkm