金盞花に哭く 6


笑みを貼り付けながら、廊下を歩いていると、名前を呼ばれた。


「名前ちゃん!」
『あれ?桃ちゃん、どうしたの?』


にっこりと笑いかけると、桃ちゃんも笑みを零す。

私と同じ髪色にちょっとタレてる瞳。
まるで鏡のよう。
ただ一つ、私と桃ちゃんの違うところは瞳の色だけ。

こんなにそっくりなのに、シロくんが選ぶのは、桃ちゃんなんだ。


「あのね、藍染隊長が市丸隊長探してて…、」
『そうなの?じゃあ、市丸隊長呼んでこないとっ!』
「ごめんね。私も一緒に行くよ。」


そう言って、桃ちゃんは私の手をギュッと掴んで微笑む。

それを素直に喜べない私は最低なのかな。


「そういえば、名前ちゃんと話すの久しぶりだね。」
『だね!あ、でも、前にもあったよ!』
「あ、日番谷くんと一緒にいたときに?あの時、市丸隊長もいたよね。」
『っ、う、うん。そういえば、もうシロちゃんって言わないんだね!』


あぁ、私の馬鹿。
シロくんの話を持ち出して、傷付くのは自分なのに。

なんで、シロくんの話持ち出しちゃったんだろ。


「だって、シロちゃんって呼ぶと怒るんだもん。シロちゃんはシロちゃんなのにねー。」

「 だ れ が シ ロ ち ゃ ん だ ! 」


突然聞こえてきた声に後ろを振り向けば、シロくんが眉間にシワを寄せていた。


「あれ?日番谷くん聞いてたの?」
「名前に用があって、こっち来たんだよ。」


私のことを名前で呼んでくれるシロくんが好き。

桃ちゃんにはしない。
私だけの特別な気がして。


『?どうしたのー?』
「市丸にちょっと、な。」
「日番谷くんも、市丸隊長に用があるの?」
「まぁな。」

『じゃ、じゃあ、早く市丸隊長のとこ行こ!!』


二人だけで話してるのがイヤで、一際大きな声が出る。

やめて、私もいるんだよ。
桃ちゃんを見ないで。
シロくん、シロくんシロくん。

好き、なの。


「ボクなら、ここにおるよ。」
『ひゃぁっ!』


フッと、耳に息を吹き込まれて、変な声を出してしまった。

それが恥ずかしくて、顔を赤くしていると、イヅルくんに「大丈夫?」と顔を覗かれる。
それにコクコクと首だけを上下すると、市丸隊長が笑った気がした。


「名前ちゃん、かわええね。」
「市丸!名前をからかうな。」
『し、シロくん…』


市丸隊長から庇うように私の前に立ってくれるシロくんは、すごくかっこよくて、この人が好きだなぁって、すごく思う。

きっかけを作ってくれた市丸隊長にちょっとだけ、感謝した。


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bkm
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