なにゆえですか! 18


ヘリコプターの中に入る。
中にはすでにL.J.お兄さんがいて、ヘリコプターの運転席にいた。
ヘリコプターが空に飛び上がろうとする。


『あ!ネメシスさんも、』
「名前、」


私がネメシスさんも助けなくちゃって思って、ヘリコプターの外へ出ようとすると、マットお兄さんに身体を抑えられた。


『で、でも、マットお兄さん、』
「名前。もう、無理だ。」
『ぅ、あ、』


扉の近くを見ると、もうたくさんのゾンビがビルに集まってきてて、
その中で、私を実験台にしてた人がゾンビに襲われてるのがわかった。

ネメシスさんは、私のことをジッと見てて、


『ぁ…、バイ、バイ…、』


最後にネメシスさんは微笑みながら、手を振ってた気がした。


『うー…、』
「………」


ヘリコプターのシートベルトをして、隣にいるマットお兄さんに抱き着くと、ジルお姉さんが私の頭を撫でてくれる。

下唇を噛んで、涙が零れそうになるのを我慢する。
泣いちゃ、ダメ。
だって、アンジーちゃんはもう泣いてないもん。
パパが死んで悲しいはずなのに。

だから、私も泣かない。
我慢、するの。

キュッと前を見れば、目の前に座っていたアリスお姉さんが難しい顔をしていた。


『アリスお姉さん、大丈夫、?』
「え?え、えぇ。大丈夫よ。」
『?』


なんだか歯切れの悪いアリスお姉さんに首を傾げる。

どうしたんだろ?


アリスSide

可愛い私の名前。

哀しいはずなのに、無理に笑みを作る名前に心がズキリと痛む。

優しい優しい子。
自分よりも他人を優先できる優しさに溢れた子ども。

私はこの子がとても愛おしい。


私のいた世界はとても殺伐とした世界だった。
裏切りなんて当たり前で、誰も信用してはいけないような世界。

私が初めて名前と出逢った時、私は思った。


「(生きる、世界が違う。)」


私の手はもうたくさんの血で汚れている。
それに比べて、名前は純粋で、だからといって世間知らずなわけでもない。

人を殺す意味も分かっているし、裏切りがどんなものかも知っている。

守りたい、守り抜きたいと思った。

この子がアンデッドたちに襲われることのないように、この子が幸せに、笑顔でいられる世界を。


『アリスお姉さーん?』
「名前…、」


不思議な力がこの子にはある。
名前は分かっていないみたいだけど、名前には確かにアンデッドを従わせることの出来る力が。


「私が、守る…!」
『?』


レッド・クイーンがいない今、名前の力が本当かわからない。

ただ、分かるのは名前を絶対にアンブレラ社に渡してはいけないということ。

拳を握って、そう決意した途端に明るい光がヘリを通過する。

名前が「あ…、」と呟いた途端、強い衝撃が機体を揺らす。


「っ、」


鋭い鋼鉄がアンジーに向かう。

咄嗟に私は身体を動かし、アンジーを庇う。

頭の中が真っ白になった。


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bkm
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