金盞花に哭く 3


私はシロくんが好き。
優しくて、かっこいいシロくん。

私が真央霊術院に行く前はずっと、シロくんが私と桃ちゃんを近所の意地悪な子から守ってくれた。

それが、桃ちゃんのためだとしても、私は嬉しくて、
その大きな背中に恋をした。


でも、その想いが報われることはなくて、
だって、シロくんは桃ちゃんが好きだから。


知ってるのに、私はシロくんを諦められない。
シロくん優しいんだもん。

私なんかも突き放せないから。


「あんたは、もっとわがままになってもいいと思うよ。」


隣で私の肩を抱く乱菊ちゃんが、ポツリと呟く。


『私、わがままだよ…、』


そう。私はすごくわがまま。
シロくんに私だけを見て欲しくて。

そんなの無理に決まってるのに。

シロくんが私だけを見てくれないから、私は桃ちゃんになりたがってる。
私、わがままでしょう?


「でも、名前はそれ以外求めないじゃない。」
『…だって、私は恵まれてるもん。血の繋がった姉がいて、大切な親友もいるんだよ?それだけで、幸せになれない私がおかしいんだよ。』

好きな人を手に入れたいなんて、おこがましいにもほどがあるよね。

そう言えば、乱菊ちゃんはとても悲しそうにした。


松本Side

あたしのたった一人の大切な親友。
愛おしくて、守ってあげたくなるような女の子。
あたしだけに、弱味を見せてくれる可愛い子。

名前はあたしを幸せにしてくれる。
一緒にいるだけで、心がふわふわと優しい気持ちになれる。

でも、名前は絶対に自分から求めない。
輪の中にいても、何かを与える側。


「わからないわ…、」
『?なにが?』
「…名前は魅力的な女の子なのにね。」
『あ、ありがと…?』


頬を染めてお礼を言う名前はすごく可愛らしい。

あたしが男だったら、絶対名前を選ぶのに。
なんで隊長は名前じゃないあの子を選ぶのかしら。

別に、雛森のことが嫌いなわけじゃない。ただ、雛森よりも名前のことが好きなだけで。


『もうそろそろ、休み時間が終わるね。』
「そうね。」
『市丸隊長、仕事してくれるかなぁ?』


そう言って、心配そうに顔を歪める名前。


「大丈夫よ。あたしがいるもの!」
『あはは!だからって、乱菊ちゃんがサボったりしちゃダメだよ?』
「あら?あたしのおかげで、隊長と毎日しゃべれるんだからいいじゃない。」
『乱菊ちゃんの、意地悪。』
「んーっ!名前は可愛いわ!」
『わっ!』


あたしが抱き締めると、花が咲いたように笑う名前に、あたしは幸せになってほしいと、切に願う。


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