私はシロくんが好き。
優しくて、かっこいいシロくん。
私が真央霊術院に行く前はずっと、シロくんが私と桃ちゃんを近所の意地悪な子から守ってくれた。
それが、桃ちゃんのためだとしても、私は嬉しくて、
その大きな背中に恋をした。
でも、その想いが報われることはなくて、
だって、シロくんは桃ちゃんが好きだから。
知ってるのに、私はシロくんを諦められない。
シロくん優しいんだもん。
私なんかも突き放せないから。
「あんたは、もっとわがままになってもいいと思うよ。」
隣で私の肩を抱く乱菊ちゃんが、ポツリと呟く。
『私、わがままだよ…、』
そう。私はすごくわがまま。
シロくんに私だけを見て欲しくて。
そんなの無理に決まってるのに。
シロくんが私だけを見てくれないから、私は桃ちゃんになりたがってる。
私、わがままでしょう?
「でも、名前はそれ以外求めないじゃない。」
『…だって、私は恵まれてるもん。血の繋がった姉がいて、大切な親友もいるんだよ?それだけで、幸せになれない私がおかしいんだよ。』
好きな人を手に入れたいなんて、おこがましいにもほどがあるよね。
そう言えば、乱菊ちゃんはとても悲しそうにした。
松本Side
あたしのたった一人の大切な親友。
愛おしくて、守ってあげたくなるような女の子。
あたしだけに、弱味を見せてくれる可愛い子。
名前はあたしを幸せにしてくれる。
一緒にいるだけで、心がふわふわと優しい気持ちになれる。
でも、名前は絶対に自分から求めない。
輪の中にいても、何かを与える側。
「わからないわ…、」
『?なにが?』
「…名前は魅力的な女の子なのにね。」
『あ、ありがと…?』
頬を染めてお礼を言う名前はすごく可愛らしい。
あたしが男だったら、絶対名前を選ぶのに。
なんで隊長は名前じゃないあの子を選ぶのかしら。
別に、雛森のことが嫌いなわけじゃない。ただ、雛森よりも名前のことが好きなだけで。
『もうそろそろ、休み時間が終わるね。』
「そうね。」
『市丸隊長、仕事してくれるかなぁ?』
そう言って、心配そうに顔を歪める名前。
「大丈夫よ。あたしがいるもの!」
『あはは!だからって、乱菊ちゃんがサボったりしちゃダメだよ?』
「あら?あたしのおかげで、隊長と毎日しゃべれるんだからいいじゃない。」
『乱菊ちゃんの、意地悪。』
「んーっ!名前は可愛いわ!」
『わっ!』
あたしが抱き締めると、花が咲いたように笑う名前に、あたしは幸せになってほしいと、切に願う。
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bkm