向かってきた赤い物体を、私を守るように影が防御する。
影が放り投げた自動販売機が道路に落ち、砂埃が立つ。
私が無事だったのを、影は確認すると、また私の影に戻っていった。
砂埃が収まり、視界が晴れる。
すると、目の前には目を丸くした金髪サングラス。
『もー!ダメじゃないですの!私じゃなかったら死んでましたわ!』
「あんた、」
『幽くんはめったなことじゃ、怒りませんのに!』
そう言うと、また青筋を浮かべる彼。
それに不思議に思って首を傾げると、胸倉を掴まれ浮かされた。
「てめェ…!」
『……私に、こんなことしていいと思ってるんですの?』
「……あ”?」
『最強の名前ちゃんに、こんなことするなんて許しませんの。……早く、おろしなさい。』
低く、唸るように声を出す。
ギロリ、私の胸倉を掴む平和島静雄を殺気をこめて睨みつければ、彼はゆっくりと私を離した。
『にゃは!よくできましたわ!』
ニコニコと笑って、平和島静雄の頭を撫でる……のは無理なので、ほっぺたをむにゅむにゅしてあげましたわ!
「あんた、あの看板のやつか…?」
『え?あぁ、もうあんな看板意味ないのですけどね!』
そう言って、平和島静雄が指すのは、化粧品の宣伝の看板。
そこには私が写ってますの!
まあ、もうやめたのですけどね!芸能界!
『とりあえず、ここだと目立つので違うところに行きましょ?幽くんのことで話があるんですの!』
にっこりと笑って、けれど、また青筋を立てる平和島静雄を制すように、私は平和島静雄の手首をギュッと力を込めて掴んだ。
私、 一人の力ですと弱いですけど、影の力もあれば、握力八十はありますのよ?
「っ、」
『貴方が化け物でも、なんでも、最強の私を傷付けるのだけは許しませんわ。』
だって、最強の私が傷付くなんて、世界に反するでしょう?
チルチルとルナルナの口が弧を描いた気がした。
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bkm