『とゆーわけで!私、今日で引退しますわ!』
ゴスロリ服を着た少女が笑顔でそういったとたん、その場にいた人は瞳を丸くして驚愕の色に染めた。
『では、私最後の作品を、どうぞご覧くださいませー!』
晴れやかな顔をした少女は、ポカンと口を開けた群衆を置いて舞台裏に戻った。
『あー!疲れましたわ!』
んーっ!と腕を伸ばして、疲れをほぐす。
貯金にはお金もたっぷり入ってますしー、これからは遊び放題やりたい放題ですわね!
『では、吉田。今までありがとうですわ!』
「うぅ…、本当にやめちゃうのかい?」
『ええ!あ、私のマンションは吉田にあげますわー!私は、幽くんのマンションに居候しますので!』
にっこり笑って、鼻水を垂らしてぶっさいくなお顔の吉田にそう言う。
それから、私はチルチルとルナルナを手に取ると、池袋の街へ飛び出した。
池袋の街を自由気ままに歩いていると、携帯の着信音。
『もしもしー?』
【名前さん、あの、】
『あ、テレビ見たんですの?言葉の通りですわよ!詳しい話は幽くんのマンションで!私、独尊丸と幽くん待ってますわー!』
【え、あの、】
ブチリ
幽くんの返事も聞かずに、携帯の電源を切ると、私は意気揚々と幽くんのマンションへ足を進めた。
▽
『あら?そうですの?』
一人歩いていると、影からおもしろそうな情報。
幽くんのマンションへ向かっていた足を方向転換。
にょんにょんと、足を軽くスキップさせて騒がしい場所へ向かう。
チラチラとたくさんの人が私を見ていたけど、スルーですわ!
だって、私に関係ないもの!
『あ、いましたわー!』
影が導いてくれる場所へ歩いていると、叫び声と怒鳴り声。
そこにスタスタと入っていく。
金髪にサングラス。
あれですわね!
にこーっと笑って、自動販売機を持つ彼の目の前に立つ。
『はじめましてですわー!』
「あ”?」
『平和島静雄さん!幽くんのお兄さんですわね!』
私の言葉に、彼がピクリと青筋を立てると、私に飛んできたのは赤い物体でした。
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bkm