金盞花に哭く 2


『シーロくん!』
「名前…、俺は隊長だぞ…?」
『でも、シロくんはシロくんだし!…それとも、呼んじゃダメ?』


ニコニコとシロくんを見つめる。
シロくんは言葉に詰まったあと、大きなため息を一つ吐くと、私の頭をくしゃりと撫でた。


「…ったく、好きにしろ。」
『へへっ、ありがと!』
「それより、任務はどうしたんだ。」
『終わったよー!市丸隊長とやってきた!』


私がVサインをして報告すると、そうか、とだけ言ってシロくんは私に背中を向ける。

あぁ、さみしい。
私を、一人にしないで。
手を伸ばす。けど、あの子の声が聞こえて、私は手を引っ込めた。


「シロちゃーん!」
「ちゃんはやめろ!」
「シロちゃんは照れ屋だね。」


あの子の言葉に、シロくんは顔を真っ赤にする。

私には、見せてくれない表情。

あの子、桃ちゃんは私の双子の姉。

守ってあげたくなるような純粋な性格。
私とは、違う。
みんなとバカやって、おちゃらけてるのが私の性格。

シロくんが、桃ちゃんが好きなのを私は知ってる。

でも、それは私にどうしようもないことで、シロくんの気持ちを変えるなんて、私には出来ない。

好き好き好き、シロくんが世界で一番好き。
そう思っても、シロくんの好きは私には来なくて、

私には見守ることしかできなかった。


「名前!」
『わっ、…ぁ、乱菊ちゃんだ!どうしたの?』


私の後ろにはいつの間にか、乱菊ちゃんの姿。

私の大切な親友。

乱菊ちゃんは、辛そうな、不思議な顔をしていた。


「あんた…、」
『?』
「っ、こっちに来なさい!」


乱菊ちゃんが私の手首を掴んで歩き出す。

何故か身体に力が入らない私は、乱菊ちゃんに引っ張られていった。


「こい!」
『……へ?』
「あんた、泣きそうな顔してたわよ。泣きたいんでしょ?ここには、あたししかいないんだから、泣いていいのよ。」
『っ、』


乱菊ちゃんの言葉に、ポトリポトリ、涙が零れる。

私の想いに気付いてくれる人がいる。

それだけで、私は、私の想いは救われる気がするの。


『ぅ、うぁ、っ、ひっ、』
「っ、」


乱菊ちゃんの身体に抱き着いて、声を出さないように私は涙を流す。

悲しい、悲しい哀しい。

なんで、私はこんなに醜いんだろう。
私と桃ちゃんは双子、血の繋がった姉妹なのに。
私は桃ちゃんを妬むことしかできない。


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bkm
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