「名前ちゃん。今日の仕事は新人オーディションの試験官だよ。」
『にゃは!りょーかいですわ!』
ペロリ、棒付き飴を舐めながら、吉田に返事をする。
私が異世界に来て三年。
私は立派に芸能界のてっぺんにのし上がりましたわ!
ちなみに、ここが異世界とわかったのは、チルチルとルナルナで侑子さん家のモコナと話したから。
さすがは私のチルチルとルナルナですわ!
『この写真が今回の新人ですのー?』
「そうだよ。みんなかっこいいよねぇ…」
吉田に渡された資料を棒付き飴片手に眺める。
確かにみんなかっこいい。
けど、なんか違うの。
これなら、まだ四月一日を合格させた方がマシですの!四月一日は料理も出来るし、裁縫も出来るしですごいのですわ!
あーぁ…つまらない。
あとで、チルチルとルナルナでモコナと交信しましよ。四月一日いじろ。
そんなことを考えながら、ペラペラと資料を見る。
ビビッと来ました。
『来ましたわ!この子見たいですわ!』
「え?その子?無表情だけど…、」
『いいから連れてくるの!』
ブツブツと文句を言う吉田に、影で作った短剣を投げつけると、吉田はすぐさま出て行った。
さすがは、私の奴隷ですわね!
ゴソゴソとタンスを物色。
ちなみに、ここは私のマンションですの!
モデルやら女優やらをやったおかげで出演料や印税がっぽがっぽですわ!
「つ、連れてきたよ!」
「お邪魔します…、」
何分かすると、吉田が帰ってきた。
ワクワクと私は無表情くんと、お話しする。
無表情くんといっても、本人じゃなくて影とだけどね!
『とりあえず、吉田はハウスですわ!』
「はいはい。じゃあ、明日の七時に迎えに来るよ。」
『わかりましたわ!』
吉田を見ずにそれだけ言うと、私は無表情くんの影と、私の影を繋げる。
『えーっと、無表情くんの名前は平和島幽ですわね。』
「(無表情くん…)そうです。」
『へぇ!お兄さんが怪力なんですの!ぜひ、相手してみたいですわ!』
「!あ、あの、」
『あ、私、影と会話出来るんですの!貴方の影、とっても面白いですわ!』
無表情くん、もとい幽くんにふんわりと笑いかける。
すると、無表情くんは一瞬だけ目を大きくさせると、またすぐに元の無表情に戻った。
『にゃは!おもっしろーい!』
それが面白くて、むにゅむにゅとほっぺたをいじれば、黙って私の言う通りにする幽くん。
にょにょ!これは可愛らしいですわ!
そんなことを思っていると、影から有力な情報をGET!
『それなら、家にありますわ!』
幽くんから離れて、冷蔵庫に向かう。
冷蔵庫を開けると、お目当ての物があった。
『にょん!あったですわー!幽くん、幽くん!これどーぞ!』
「あ、ありがとうございます。」
冷蔵庫から出して来た、どっかの俳優にもらったプリンをスプーンと一緒に幽くんに渡す。
『食べてもいーよ!』
ニッコリと笑って言った私の言葉に、幽くんは再度お礼を言うとプリンを食べた。
にゃは!面白い子みーっけ!
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bkm