世界が一つになるまで 20


めーちゃんSide

かわいそうな僕のご主人。
誰かを受け入れることが怖くて、受け入れたくなくて、けど、周りがご主人をほっといてくれない。

本当にご主人の心の中に入れるのは僕だけ。
その事実がとても嬉しくてたまらない。
僕がご主人のモノであるように、ご主人は僕だけのご主人様。

優しくてかわいそうなご主人。

僕はずぅっとご主人から離れない。
病めるときも、健やかなるときも、僕は、僕だけは、ご主人と一緒にいて、慰めてあげる。


《ごしゅじん、ごしゅじん。なかないで?ぼく、ごしゅじんとずっといるよ?ごしゅじんのこと、まもるから。》
『めー、ちゃん、』


長髪が出て行ったあと、涙を零しながら枕に顔を埋めるご主人の頬をペロリと舐める。

すると、ご主人は僕の身体に顔を埋める。
ギュッと僕を抱き締めて離さないご主人。

僕はご主人が大好き。

でも、時々すごく不安になる。
僕とご主人は違うから。

僕は何百年も生きる神使。
ご主人は、いつかは死んでしまう人間。
僕とご主人はずっと一緒にはいられない。

もしも、ご主人が死なない人だったら。
そこまで考えて、僕はフルフル首を振る。

そんなのはご主人じゃない。

僕はご主人が儚くて、泪をたくさん流すその綺麗な心が大好き。
もしも、ご主人が“人”じゃない何かになってしまったら、それご主人じゃないもん。

朱雀様たちは、ご主人を苦しませてる。
重い重い狂おしい愛で。

神様にも好かれちゃうご主人。

だからね、僕は想うんだ。
僕は朱雀様たちには勝てない。
でも、それでも、ご主人を護るためなら、僕はなんでもしようって。

僕はご主人を信じてる。
ご主人も僕を信じてる。
僕たちの中に裏切りなんてないんだ。

それに、僕は裏切られたって構わない。
愛しい愛しいご主人になら。


『…ごめんね。めーちゃん。もう、泣かないよ。』
《だいじょーぶだよ、ごしゅじん。》
『でも、迷惑でしょ?』


泣き腫らした瞳で僕を見つめるご主人。
あぁ。ご主人、ご主人は優しいね。さみしいんだね。

でも、だいじょーぶだよ。ご主人。


《うーうん!ぼく、ごしゅじんがないてるところみると、うれしいよ!ぼくが、しんらいされてるみたいで!》


だって、ずっと僕がいるもん。


『っ、ごめんね、ごめんね。めーちゃん、大好きだよ…』


ご主人が笑ってると、僕も笑える。
ご主人が泣いてると、僕も哀しい。
ご主人が怒ってると、僕も怒る。
ご主人がさみしいと、僕も寂しい。

僕のすべてはご主人で成り立ってる。

だって、ご主人は僕を救ってくれた“世界”だから。

泪をポロポロ流しながら、僕に笑いかけるご主人への想いは“愛しい”。


…あれ?僕、前にもこんな想いしなかったっけ?


一つの疑問を宿しながら、世界は廻る。



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