声が、近付く。
《ごしゅじーん?》
めーちゃんの言葉にハッとなる。
あ、あれ?ボーッとしてました…
頭をフルフルと振って、足元で首を傾げているめーちゃんを抱き上げる。
『ごめんね。ボーッとしてた。』
《それならいいけど…、でもでも、なんかあったら、ちゃんといってね?》
『わかってる。』
スリスリと私に頭を擦り寄らせてくるめーちゃんに、クスリと笑みを浮かべる。
《?なんで、ごしゅじんわらってるのー?》
『ふふ…、めーちゃんが可愛いからかな。』
《む。ぼくはかっこいいんだよ!》
『あはは、そうだね。めーちゃん、かっこいいよ。』
まだ納得していなそうなめーちゃんの頭を撫でて、途中だった編み物に視線を移す。
ここに来て、やることのなかった私は、前から趣味でもあった編み物をしてる。
今作っているのは、めーちゃんの帽子。
この前は、コースター。
それは私の部屋に飾られてる。
《ごしゅじん、ごしゅじん!》
『なぁに?』
《だれか、このへやにくるよ。》
『……そっか。』
カタリ、編み棒を机に置く。
すると、タイミング良くコンコンと扉が叩かれた音がした。
どうぞ、と声をかけると、星宿が入ってきた。
「名前、」
『……はい。なんですか、?』
星宿が少し恐いと思ってしまう。
私のことを知ってた星宿。
私の知らない記憶を持っていた人。
「愛してる、名前…」
『っ、やめ、て、ください…』
「私を受け入れてくれ。名前が私を受け入れないならば、私はお前を殺してしまう…」
そう言いながら、私に近付く星宿の瞳は狂気に歪んでいて、
ゾッとする。
この人の重たい愛に。
私以外はどうでもいいとでも言いそうな彼に。
この人は、国を治める皇帝。
私なんかじゃなくて、民を思うべきなのです。
実際、原作での彼は民を一番に考える方でした。
『お願いで、すから、私のことは、どうかほっといてください…』
「何故。私は名前を愛してる。……この国よりも。」
『!?』
その言葉は言ってはいけなかった。
「名前が私を受け入れてくれないなら、私はこの国を捨て、一人の男になろう。」
『っ、』
「受け入れるだけ、受け入れるだけでいい。」
私のモノになってくれ。
その言葉に、私は涙を零しながら、彼の抱擁を受け入れた。
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bkm