ミュージックポップの公開録画に出るしかないらしい。
やだな。顔出しするの。
私の歌は売れてる。けど、顔出しはまだしたことないんだよね。
私の、遥の顔を知ってるのは芸能関係の人だけ。
あぁ、顔出しイヤだなぁ…
「よっ!」
『……相馬先輩、』
一人でぼんやりと空を見上げていると、私の視界にガーディアンの相馬空海がニュッと顔を出してくる。
あぁ、めんどくさい。
せっかく、久しぶりの一人なのに。
「久しぶりだなっ!」
『そうですね。で、何の用ですか?』
「あぁ。いや、一昨日、お前どこにいた?」
その言葉に、はぁ?と言いたくなるのを我慢して首を傾げる。
「あ、一昨日の放課後な!」
『一昨日の放課後……?』
思い出す。
一昨日と言えば、日奈森あむがキャラなりをした日。
あぁ、私のこと見られてたのかな。
『一昨日は普通に家に帰りましたよ?』
「……だよなぁ。悪いな!」
『いえ。』
「つーか、ここ気持ち良いな!」
そう言ってゴロンと寝転がる相馬空海。
なんなの。居座る気なの?
やめて欲しい…
お願いだから、一人にさせてよ。
人に囲まれるのは嫌い。
だって、私とは違うから。
私みたいに嘘で作られてる人間とは違う。
彼らは私より純粋な存在。
ルーアに逢いたい。
あの子を見ていると、自分の純粋だった頃を見てるみたいで、落ち着く。
わかってる。それがただ私の心を慰めてるだけなんて。けど、今の私は純粋ではいられないから。
「あ、そうだ!」
『……なんですか?』
ゴロンと寝転んでいた相馬空海が突然起き上がって私を見る。
それににっこりと笑顔で対応した。
もう私は純粋でいられない。
なら、秘密がバレないためなら、私は嘘ですべてを塗り潰す。
だって、もう私にはなんにもないんだから。
「あのさ、今度お茶会こねぇか?唯世たちも名前がお茶会にきたら、きっと喜ぶぜ!」
だからね、
『…ごめんなさい。みんなの人気者のガーディアンとお茶会したってバレたら、みんなに文句言われちゃいますから。』
「そんなこと…!」
『もう、私教室戻りますね。さようなら。』
誰も私の中には入ってこないで。
嘘に包まれたちっぽけな私を誰も暴かないで。
家族も友達もいない私には、なんにもないから。
空っぽの私を誰にも見られたくない。
そう、願ってしまうのは馬鹿なこと?
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bkm