「なまえ、本当にやるの…?」
『うん。乱馬くんとやるの、楽しみなんだ。』
九能先輩と闘ってから、翌日の今日。
今日は乱馬くんと闘えるらしい。
乱馬くんにお願いしたら、渋りながらも、女の身体だったらってことで、OKがもらえた。
乱馬くんって、なんだかんだいってフェミニストだよねぇ。
あかねちゃんの将来の夫がいい子で私は嬉しいよ。
『じゃ、乱馬くん、よろしくね?』
「悪いけど、手加減しねーからな。」
『そうしてくれると嬉しいな。』
道場にて。
女の子姿の乱馬くんと向き合う。
道場の隅にはあかねちゃん。
それにしても乱馬くん。
さすがというか、なんというか…
隙が、ない。
「来ねぇなら、俺から行くぞ。」
『わっ、』
乱馬くんがそう言ったとたん、私のお腹の辺りに突きが繰り出される。それをギリギリで躱すと、私は乱馬くんの首を狙って足を上げた。
「っ、」
『避けられた…』
「やるじゃねーか!」
楽しそうな乱馬くんに、私まで楽しくなってくる。
何も出来ずに死んだ悔しさから始めた拳法。
それはすでに私の一部になってた。
強い人と闘うことが愉しい。
ワクワクした気持ちが心いっぱいに広がる。
乱馬くんと私。まるで、打ち合わせをしたかのように技が重なり合う。
『ふふ!乱馬くん、強いね!』
「なまえも、な!」
乱馬くんからの拳を受け流して、こちらからも拳を乱馬くん目掛けて出すと、私の拳も乱馬くんに受け流される。
ああ…!気持ちいい…!
汗が流れるけど、そんなのも気にならないくらい気持ちいい。
「っ、おりゃ!」
『くっ、は、』
何時間経ったんだろう。
手合わせする前は、明るかった外はもうすでに暗かった。
疲れ切った私の身体に乱馬くんの拳が入る。
そのまま私は倒れ込んだ。
「わ、悪い!」
『はっ、は、だいじょーぶ。疲れちゃっただけだよ。』
私が倒れ込むと、しまったという顔をして私に駆け寄る乱馬くんに笑顔を向ける。
あーあー。負けちゃった。
私、体力ないなぁ。
『あは。でも、乱馬くんと、楽しかったなぁ。』
「…まあ、なんだ。お前もよくやったな。」
『ふふ、ありがとう。』
倒れ込んでる私に乱馬くんが手を差し伸べてくれたので、その手をとる。
と、視線を感じた。
『あれ?お父さん?』
そこには、滝のように涙を流すお父さんと、玄馬さんと、あかねちゃんたち。
「うぉぉおお!!とーさんは感動した!」
「『へ?』」
涙を流したお父さんが私たちに近付く。
え?なんで感動したの?なんかしたっけ?
ああ!乱馬くんが引いてる!
「よし!なまえと乱馬くんでいいんじゃないか?」
『?なにが?』
「なにって、あんた許嫁の話に決まってるでしょ。」
『え”。』「は?」
……なんだか、おかしなことになっちゃった。
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bkm