私の記憶が確かなら、裏庭みたいなところにいた気がするんだけどなぁ。
そんなことを考えながら、あかねちゃんと乱馬くんを探してグラウンド付近を歩く。
すると、けんかっぷるの争いの声が聞こえたので、そちらに近付く。
『あ、いたいた。』
「なまえ!」
『あれ?なんであかねちゃんと九能さんが向かい合ってるの?それに、乱馬くん大丈夫?』
「へっ…!俺にかかれば、こ、このくらい…!」
『(無理するなぁ。)』
私が行くと、すでにそこには九能さんと向かい合ってるあかねちゃんの姿。
そして、いまだに女の子から戻れてない乱馬くんの姿。しかも、すごい格好。
苦笑していると、九能さんとぴったり目があった。
「君は…!」
『今朝はどうも。』
「なまえ、九能先輩と知り合いなの?」
『いや、今朝ぶつかっただけだよ。』
首を傾げて私に聞くあかねちゃんに笑顔で言葉を返す。
まあ、プロポーズ紛いのこともされたけど、丁重に断ったし。
「結婚しようじゃないか!」
『ごめんなさい。お断りしますね。』
「…なんでプロポーズされてるの?」
『よくわからないけど、この人ぶつかった時からこれなんだ。』
「では、君の名前は…、」
しつこく聞いてくる九能さんに、にっこりと笑顔をむける。
『では、私と勝負してください。』
「よぉしっ!君が勝ったら結婚してあげよう。」
『あ、そんなこと一言も言ってませんから。』
笑顔を保ったまま、九能さんと向き合って構える。
あかねちゃんは乱馬くん放置で私のこと見てるけど、いいのかな。乱馬くん、女の子のままなんだけど。
……ま、いっか!
『じゃ、よろしくお願いしますね。』
にっこりと笑って頭を下げた。
あかねSide
一瞬のことだった。
ふわりとなまえの身体が動いたと思った、次の瞬間、九能先輩はなまえに投げられてた。
流れるような動作に惚れ惚れする。
あたしの双子の姉、天道なまえは、かすみお姉ちゃんにそっくりな大人しそうな外見とは裏腹に、あたしよりも拳法の達人。
強くなるために、中学時代は日本を歩き回ってたらしいし。あたしには内緒で、出掛けたのにはムッとした。
けど、無事だったから、まあ、いいかなって。
『これでいいかなぁ?』
「なまえ、また強くなったんじゃない?」
『ほんと?ふふ。あかねちゃんにそう言われると嬉しいなぁ。』
本当に嬉しそうに頬を緩ませるなまえながら、あたしの髪を撫でるなまえに顔が赤くなる。
「俺はいつでも相手してやるぜ。来な。」
「ふっ、面白い。君が勝ったら、交際してあげよう!」
「だあれが、交際を…、申し込んどるかっ!!」
周りの声は無視。
あたしには優しく微笑むなまえしか見えない。
誰が言おうと、絶対に、なまえは誰にも渡さない。
あたしの大切な姉だもん。あたしの片割れ。
ましてや、男だか女だか曖昧なやつに、なまえは渡さないんだから!
『あかねちゃん?どうしたの?楽しそう。』
「んー?なまえと一緒にいれて幸せだなぁって!」
『!…あはは!あかねちゃん、素直で可愛い。』
蕩けるような笑みを魅せるなまえが、あたしは世界で一番大切なのです。
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bkm