「なまえ、なまえ、」
『ん……ぁ、あかねちゃん…?』
身体を揺さぶられた感覚で目が覚めた。
すると目の前にはあかねちゃん。
あ、そういえば家に帰ってきたんだとボーッとする頭で認識する。
「お風呂沸いたわよ。」
『あ、ほんとぉ?じゃあ、私ちょっと入ってくるね。』
どっこいしょ、と起き上がって目を擦る。
んー、やっぱまだちょっと眠い…かも?
寝ぼける頭で、あかねちゃんに手を繋がれながら、お風呂場に移動。あかねちゃんに着替えを持たされ、出ていったのを確認してから服を脱ぐ。
最近、胸が大きくなって邪魔なんだよねぇ。
そんなことを考えながら、ガラッと扉を開ける。
『………』
「…………」
『………………えーっと、はじめまして?』
扉を開けると、そこにはいい筋肉のつき方をしてる裸の男の子。ちなみに、おさげ。
思わず、はじめまして、なんて言っちゃったけど、間違いではないと思うの。
「………ちげぇだろ!」
『あ、そうだよね!』
いやー、思わず相手に突っ込まれた。
はじめまして、じゃないよね。
『とりあえず、お風呂に入ってもいいですか?』
「それもちげぇ!」
おさげの男の子。もとい、乱馬くんにお風呂でバッタリしちゃいました。
あれ?これってあかねちゃんが、バッタリするはずなんじゃなかったけ…?
…ま、あかねちゃんが裸見られるのは、年頃だし、恥ずかしいから私でよかった…のかな?
『とりあえず、いったん出るね。』
「お、おぉう。」
お風呂、入りたかったんだけどな。
そんなことを思いながら、泣く泣く私は元の服に着替えて、あかねちゃんたちのところに向かった。
「あれ?なまえもう出たの?」
『ううん。お風呂に男の子がいたから、出てきたんだ。』
「あ、そ……男?」
『うん。』
「裸、見られたの?」
『まあ、不可抗力で?』
「……………重しつけて風呂桶の底に沈める!!!」
『え、』
庭の岩で出来た灯籠の上の部分を持ち上げて、そんな不吉なことを言うあかねちゃんにワタワタと焦る。
あれ?あれ?どうしよう。
このままだったら、あかねちゃんが許婚を殺してしまいそうなんだけど!
あかねちゃんが騒いでるのを聞きつけて、なびきちゃんとかすみちゃんまで来た。
『あかねちゃん、私なら大丈夫だから落ち着いてよ。』
「落ち着けるわけないわよ!あたしの名前が男なんかに汚されたのよ?!」
『いや、汚されてない!汚されてないよ!』
あかねちゃんが暴走を始めてしまった。
「おかしーわね。お風呂なら乱馬ちゃんがはいって…」
「あの…、」
かすみちゃんが、そう零したとき、廊下の向こう側から乱馬くんがやってきた。
「あ…あなた。」「誰よ。」
「早乙女乱馬です。すいません。」
とりあえず、いまだに岩を抱えてそれを乱馬くんに投げつけようとしてる、あかねちゃんを止めることが私の使命だと思う。
prev next
bkm