「ん?なまえ帰ってきてたの?」
『ついさっきね。久しぶり、なびきちゃん』
お父さんに言われて居間に集まると、そこにはなびきちゃんがいた。
あれ?かすみちゃんは?とも思ったけど、きっと台所にいるんだろう。
「ふーん、お土産は?」
そして妹が帰ってきてそうそうお土産を期待するなびきちゃんに笑う。
『あぁ、言うと思ったから、なびきちゃんに似合うと思ったカチューシャ買ってきたよ。』
「きゃー!やっぱりなまえは気がきくわ!」
『あはは、ありがとう。』
それにカバンから出したカチューシャを出せば、すごく喜ばれた。
それでいいんだ。適当にお店で買ったやつなのに。
あ、お金の心配はない。
修行時に、バイトやらなにやらで懐が潤っていたから。人に親切することって大事。
「あら?なまえ?」
『かすみちゃんも久しぶり。これ、お土産ね。』
「まぁ。ありがとね。」
かすみちゃんに渡したのはよく切れる包丁。
ちなみにお父さんには、お酒。あかねちゃんには髪を縛るリボンを買ってきた。さらに言えば、もしもの時ように、乱馬くんには結い紐。玄馬さんにもお酒を買ってきた。
うーん、でも今から来るなら必要なかったな。
「ごほんっ、」
『あ、お父さんごめんね。いいよ、話して。』
私たちの会話に入れなくて、ワザとらしく咳払いしたお父さんに苦笑しながら、話を促した。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
ポツポツと外は雨が降り始めていた。
「許婚?」
「うん、とーさんの親友の息子でな。早乙女乱馬くんというんだ。」
やっぱりすごーくイヤそうなあかねちゃんに、苦笑い。
まあ、結局あかねちゃんと乱馬くんが付き合うことになるんだろうけど。
「おまえたち三人の誰かが将来、彼と結婚して、道場を継いでくれれば、わが天道家も安泰だ。」
「ちょっと待ってよ。」
お父さんの言葉を遮って、あかねちゃんがムスッとしたようにお父さんに口出しする。
「あたしもなまえもヤダからね!」
『あれ?私もなの?』
「なまえはいいの?!」
『うーん…どっちでもいいかな。』
どうせあかねちゃんと乱馬くんは、ハートフルライフが待ってるし。
私が許婚になったところで、かたちだけみたいな?
『とりあえず、私は二階で昼寝しててもいいかな。いろいろあって疲れたんだよねぇ。』
「あ、そうよね。ごめん…」
『大丈夫だよ、あかねちゃん。あ、かすみちゃん、お風呂沸かしといてもらってもいい?』
「ふふ、いいわよ。」
『ありがとう。』
しょぼんとするあかねちゃんの頭を撫でると、私は二階の自分の部屋のベッドに向かった。
「…ねぇ、なまえの男前上がってんじゃないの?」
「そうねぇ。」
「あかねが顔赤くして動かないんだけど…」
「なまえはとーさんに似たからな。」
「「「それはない。」」」
「…………」
なので、私がいなくなった居間で、そんなことが話されていたことは知らなかった。
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bkm