私の目の前には廣瀬夢。後ろには壁。
私、どうすればいいんだ。
「なんでみんな、夢を愛してくれないのよっ!」
『…はぁ、』
思わずため息吐いちゃったけど、間違いじゃないと思う。
だって、愛してくれないとか…
どこのお姫様やねーん。
「せっかく、この夢が、みんなの、お世話してあげてるっていうのに!!」
『っ、』
別に、文句を言うならいいんだよ。
文句を言うだけなら。
でもさ、お願いだから、私の脛を蹴りながら、鬱憤晴らすのは止めて欲しい。
絶対アザになったんだけど。どうしよう。
テツにバレたら、私ってば隠し通せる自信ないよ。
むしろ、ペラペラとしゃべっちゃうよ。
私の憂さ晴らしも兼ねて。
性格?悪くてなにが悪い。
てゆか、自分が蹴られてるのにいじめっ子庇うやつがいたら見てみたいわ。どこの聖人?
「ほんとウザい!もっと簡単だと思ってたのに!」
『………』
意味がわからん。
なにが簡単?やだ、この子電波っぱー。
誰か助けて、へるぷみー。
「ちっ、もうそろそろ行かなくちゃ。時間になるじゃない!」
『っっっつ??!!』
「さっさと仕事来なさいよね!」
ガンッ、と変な音が私の足からする。
っっ!マジ痛い!
なんで私の足を殴ってから、仕事に戻るんだ!
思わず私は足を抑えてうずくまる。
私の目はもう涙目だよ馬鹿!!
▽
げっそりしながら、私はマネージャーの仕事へ向かう。
歩くたびに足が響く。
あ、これもうダメかも。死ぬかも。
「名前!」
『??!!!』
そんなことを思いつつ、私がソロリソロリとなるべく足に負担をかけずに歩いていると、後ろから急に抱き着かれた。
っ!!あ、アホ峰のやろーっ!!
『おまっ、アホ峰!』
「ん?どうしたんだよ。」
『あっ、……いや。うん。なんでもない。』
言えない。絶対言えない。
足が痛いなんて言ったら、絶対問い詰められる。
テツにならまだしも、アホ峰やら黄瀬やらに言ったら、廣瀬夢 ジ エンド。
イコール、私の休みはナシ。
うん。無理だわ。
『とにかく、私にいきなり抱き着くな!』
「なんでだ?別にいいじゃねぇか。」
『よくないから言ってんの!』
いまだに私に抱き着いているアホ峰の顔を手で押す。
無駄に力が強いアホ峰にイラッ。
殺意が湧きます。
「あー!名前ちゃんになにしてんの!!」
『いっ!!?』
ベリン、アホ峰の身体が離れたと思ったら、今度はさつきちゃんが私の身体に抱き着く。むしろ…絡みつくって感じなのは気にしちゃいけない。うん。私は気にしないよ。気にしない気にしちゃいけないんです。
てゆか本当に、マジで、本気で、脛が痛い。
「名前ちゃん!一緒にドリンク作ろ!」
『いいよー。さつきちゃんは、一本だけ作ってくれればいいからね!』
「?うん?」
「ちょっと待て!その一本は誰に渡す気だ!!」
アホ峰の言葉を無視して、私はさつきちゃんとドリンク作りをすることにした。
ちなみに、さつきちゃんのドリンクはスペシャルドリンクです。
………殺人的な。
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bkm