甘味依存症 14


私の目の前には廣瀬夢。後ろには壁。

私、どうすればいいんだ。


「なんでみんな、夢を愛してくれないのよっ!」
『…はぁ、』


思わずため息吐いちゃったけど、間違いじゃないと思う。

だって、愛してくれないとか…
どこのお姫様やねーん。


「せっかく、この夢が、みんなの、お世話してあげてるっていうのに!!」
『っ、』


別に、文句を言うならいいんだよ。
文句を言うだけなら。

でもさ、お願いだから、私の脛を蹴りながら、鬱憤晴らすのは止めて欲しい。

絶対アザになったんだけど。どうしよう。

テツにバレたら、私ってば隠し通せる自信ないよ。
むしろ、ペラペラとしゃべっちゃうよ。
私の憂さ晴らしも兼ねて。

性格?悪くてなにが悪い。
てゆか、自分が蹴られてるのにいじめっ子庇うやつがいたら見てみたいわ。どこの聖人?


「ほんとウザい!もっと簡単だと思ってたのに!」
『………』


意味がわからん。
なにが簡単?やだ、この子電波っぱー。

誰か助けて、へるぷみー。


「ちっ、もうそろそろ行かなくちゃ。時間になるじゃない!」
『っっっつ??!!』
「さっさと仕事来なさいよね!」


ガンッ、と変な音が私の足からする。

っっ!マジ痛い!
なんで私の足を殴ってから、仕事に戻るんだ!

思わず私は足を抑えてうずくまる。
私の目はもう涙目だよ馬鹿!!





げっそりしながら、私はマネージャーの仕事へ向かう。

歩くたびに足が響く。
あ、これもうダメかも。死ぬかも。


「名前!」
『??!!!』


そんなことを思いつつ、私がソロリソロリとなるべく足に負担をかけずに歩いていると、後ろから急に抱き着かれた。

っ!!あ、アホ峰のやろーっ!!


『おまっ、アホ峰!』
「ん?どうしたんだよ。」
『あっ、……いや。うん。なんでもない。』


言えない。絶対言えない。
足が痛いなんて言ったら、絶対問い詰められる。
テツにならまだしも、アホ峰やら黄瀬やらに言ったら、廣瀬夢 ジ エンド。
イコール、私の休みはナシ。

うん。無理だわ。


『とにかく、私にいきなり抱き着くな!』
「なんでだ?別にいいじゃねぇか。」
『よくないから言ってんの!』


いまだに私に抱き着いているアホ峰の顔を手で押す。
無駄に力が強いアホ峰にイラッ。

殺意が湧きます。


「あー!名前ちゃんになにしてんの!!」
『いっ!!?』


ベリン、アホ峰の身体が離れたと思ったら、今度はさつきちゃんが私の身体に抱き着く。むしろ…絡みつくって感じなのは気にしちゃいけない。うん。私は気にしないよ。気にしない気にしちゃいけないんです。

てゆか本当に、マジで、本気で、脛が痛い。


「名前ちゃん!一緒にドリンク作ろ!」
『いいよー。さつきちゃんは、一本だけ作ってくれればいいからね!』
「?うん?」
「ちょっと待て!その一本は誰に渡す気だ!!」



アホ峰の言葉を無視して、私はさつきちゃんとドリンク作りをすることにした。

ちなみに、さつきちゃんのドリンクはスペシャルドリンクです。

………殺人的な。


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bkm
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