『…あの、なんですか。』
「べ、別になんにもないけど!」
チラチラ見てくる少年に耐えられなくなって、少年の方を向けば目を逸らされた。なぜに。
私、なにもしてないんだけど。
『なら、いいですけど。』
なんでもない、と言われたので、とりあえず前を向く。
人の言ったことをすぐに信じる。
それが日本人です。
それにしたって、チラチラと見てくる少年。
やーめーてー。
みーなーいーでー。
心を無にして遠くを見つめる。
となりを見たら、なんかやっかいごとになる。絶対なる。てか、現在進行形でなってるもん。
ここ、どこ。
「な、なぁ…、」
『………(ジョーカーへるぷ。RDへるぷ。)』
「おい!」
『……はい?』
あえてスルーしていたのに、大声を出されたらスルーできない。
「……」
『えーっと、なんかありましたか?』
なんにも言わないから、私が話しかけるしかなかった。
なんで話しかけてきた。くそぅ。
「俺さぁ、人殺しなんだよね。」
『(なんでそれ言った。なんで言った。)』
「…なんで、俺、こんな生き方しか出来ねぇんだろ。」
『(知らない、知らないよ。)』
「あんたって、なんで俺なんかの夢の中にいんの?」
こっちが聞きたい。
てか、人殺しって重大なカミングアウトだよね。
私って、殺されるの?
「あ。あんたなんか殺さないからさ。安心しなよ。」
『はぁ。』
「……てか、あんたって、なんかいい匂いする。」
待って。どういう意味なの。
ジリジリと近付いてくる少年に、私もジリジリと下がる。
『いや、あのさ、君って、なんて名前?』
「…俺の、名前…?」
とっさに出た言葉。
私の言葉に少年は止まる。
すると、少年はすごい考え始めた。
え、私ってなんか変なこと言ったの?
「なぁ、T-13って名前だと思うか?」
『え、……違うと思う。』
「だよな……」
さらにまた悩み始めた少年。
その様子を見ていると、ふいに頭の中に私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
キョロキョロと辺りを見渡す。
いまだに悩んでる少年はスルーで。
『?ジョーカーと、クイーン…?』
私の名前を呼ぶ人の声を呟けば、次に目が覚めた時、私の目の前にはジョーカーとクイーンがいた。
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bkm