NOとは言えないそれが日本人 15


空中ブランコのポールは、舞台の左右に立てられている。クイーンは左の、私とジョーカーは右のポールに登った。
その時、観客の悲鳴とも歓声ともつかない声が起こる。瞳さんがバランスを崩した。落ちると思った瞬間、バランスビームの棒を両手で掴んだ。

私はジョーカーに待てをされると、そこにニッコニッコ笑いながら立つ。

クイーンとジョーカーがブランコの棒を掴んで、空中に大きく漕ぎ出す。

瞳さんがバランスビームから手を離した。でも、その時がっしりと、クイーンが瞳さんの手をキャッチした。

クイーンは瞳さんをジョーカーにパス。
ジョーカーは、それをポールのほうへブランコをふる。瞳さんが、無事私のほうのポールにきた。それから、ジョーカー。

ジョーカーは私をまた抱き上げると、誰も乗ってないブランコをクイーンのほうへ押し出す。

そして、大きく一回、二回と揺れ、ブランコが天井近くまで上がると、クイーンは手を離した。

空中で大きく手を広げ、一回転。
それはまるで天使のようで。
ちょっとだけ見惚れた私が憎い。

クイーンがもう一つのブランコを掴み、ポールにおり立った。
クイーンは下りると同時に、ジョーカーから私を奪って私を抱き上げる。
私が引っ掻いたりして、逃げようとしてるのに、全然ダメージがないようでイラッ。

スポットライトが私たちを捉えた。
それに瞬時に笑顔を見せると、私は笑顔でクイーンに言った。


『離してください。』
「それは無理な相談だね。」


そんなことを言いながら、観客に投げキッスを送るクイーンが憎いです。


「わたし、いつも思ってたんだ。演技に失敗して危険な目にあったとき、白馬に乗った王子様が助けにきてくれるって。」


瞳さんがキラキラとした目でクイーンを見る。

その言葉に、白タイツで王子様格好のクイーンを想像してみた。

………妙に似合っててイラッてきた。


「わたしは、王子様ではなく怪盗ですよ。」


そうこたえると、クイーンは自分のポケットからワイヤーロープをだして投げた。
ロープはテントの天井、中央の一番高い部分に巻きつく。

ちなみに、この動作をする間もクイーンは私を離さない。助けを求めるように、ジョーカーをみれば、プイと顔を背かれてしまった。


「あなたは観客に不安を与えないために、最後まで笑顔で演技を続けた。最高のアーティストです。私のような怪盗には、このスポットライトはまぶしすぎます。」


そう言い残すと、クイーンはやっぱり私を抱き上げたまま、ジョーカーとともにロープを掴み、空中に飛び出した。

するするとロープを登っていく私たち。


「クイーンをにがすなーー!」


下で黒田さんがそんなことを叫びを聞きながら、私は、クイーンってスポットライトとか目立つこと大好きじゃんか、とか思ってた。


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bkm
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