NOとは言えないそれが日本人 13


まるで本物の探偵のように西遠寺さんを人差し指でさす黒田さん。
それに西遠寺さんは手錠をかけられた両手でその指の方向をかるくかえていた。

余裕あるな、西遠寺さん。

そんなことを考えながら、いつになったら私は家に帰れるんだろう、とか思って、あの二人の会話を傍聴。

黒田さんが、昨日の夜食べたものを覚えてるか、と西遠寺さんに聞いてるのを聞いて、自分がなに食べたか考えてみた。


『(…あれ?思い出せないや。)』


ちょっと悲しくなった。

私が悲しくなっていると、カーテンをあけて、青い顔した若い男が入ってきた。


「団長、大変です!」
「どうした?」
「瞳さんがーー、」


それだけでなにか重大なことがおこってるとわかった。

みんな、カーテンをあけてリングのほうへ出る。

私は別に行きたくないんだけど、ジョーカーと手錠で繋がってるから行くしかなかった。

まあ、行きたくないとか言わないよ。協調性を大事にするのが日本人。


「観客は、事故に気付いてるのか?」


瞳さんの芸に使う一本の細い棒を支える、四本のワイヤーのうちの一本が切れていて、もう一本も切れかけて、棒かま大きく傾いていた。

今にも、瞳さんが落ちそうで危ない。

ホワイトフェイスが若い男に聞くと、男は首を振った。


「いえ。ワイヤーが切れたのも、演出だと思ってるみたいです。でも、このままでは、瞳さんが落ちます!」



かたむいた棒の上で、観客に笑顔を見せてる瞳さん。

サーカス団の鏡だね。顔が青ざめてるけど。
とりあえず、助けなくちゃいけないんじゃないかなー、と思って黙って話を聞いてても、このサーカス団の中には、空中ブランコが出来る団員がいないらしい。

なすすべもなく、瞳さんを見ることしか出来ない団員にはぁ…とため息をつく。
それから、ジョーカーを見ると、ジョーカーも私を見ていたので、私の行動は決まった。


『私の手錠をはずしてください。』
「なにをいってるんだ…」


そう上越警部にいうと、驚いたように私を見る。


『瞳さんを助けなくちゃいけないんでしょ?だったら、はずして。』


警部は迷ってる。
動いたのは、岩清水刑事に扮したジョーカーだった。


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bkm
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