NOとは言えないそれが日本人 12


まあ、それからなんだかんだあって私たちは楽屋にいます。
私の予想通り岩清水刑事はジョーカーでした。
さっき教えてもらった。
そして猫がいまだにひっついて離れないのはなんでだろう。


「なんだね、公演中に!」


楽屋にて、上越警部と岩清水刑事に囲まれていると、伊藤さんと、それと一緒にいた男の人と、黒田さんが入ってきた。

ホワイトフェイスが突然入ってきた三人に言う。だけど、すぐにシルバーキャット瞳さんの軽業が始まるらしく、文句を言うのを中断して、カーテンを開けてリングへ向かった。


「つづいては、華麗なる軽業をお楽しみください。演じますのはシルバーキャット瞳!」


ホワイトフェイスの声が、カーテンのむこうから聞こえてくる。

ホワイトフェイスが帰ってくると、ホワイトフェイスは文句を言おうと口を開いた。


「まあ、そんなに怒らないでください。いまから、みなさんに紹介したい人がいるんです。」


けど、黒田さんの言葉に押し黙ってしまった。

あー…イヤな予感しかしないなぁ…

そんなことを思っていれば、やはりというかなんというか。
黒田さんの紹介したい人はクイーンだったらしい。しかも、クイーンはこの中にいる、と。

キョロキョロと辺りを見渡す。
腕組みをしている力男のジャンさん。
しゃがみこんでる竹馬男の井上さん。
壁際にもたれている催眠術師、シャモンさん。
むちを持ったビースト。
それから上越警部と岩清水刑事、伊藤さん黒田さん、知らない男の人、そして私。

この中にクイーンがいる。
…なら、ここで叫んだら私は実家に帰れるかなーなんて考えてから、自分の右腕に手錠が嵌ってることを思い出してずーんと落ち込んだ。


「貴方が怪盗クイーンです!」


なんてことを考えている間に、黒田さんが指をさしながら私の知らない男の人…


「そう、東亜新聞社会部の西園寺考太郎さんーー貴方が怪盗クイーンです。」


もとい、西園寺考太郎さんの正体がクイーンだと、はっきりと言った。


「……冗談でしょ?」
「冗談を言ってる目に見えますか?」


驚きから解放されたような西園寺さんが、必死に繋いだ言葉は、黒田さんに一蹴された。


「西園寺さん、中学二年のときの担任の先生は?」
「吉田先生です。」
「出席番号は?」
「十八番です。」


西園寺さんは黒田さんの質問に即答する。

ぶっちゃけ、出席番号って必要なくないですか…?

なんて考えている私の横で、黒田さんが西園寺さんの両手首に手錠をかけた。


「午後七時四十五分ーー国際刑事警察機構からの指令により逮捕する。」


高らかに言った黒田さんに、そいつはクイーンじゃないですよ、って言ってみたらどうなるのかな、なんて思ったけど、黙っておいた。

だって、クイーンがそんな簡単に捕まるわけないもん。

そんな大事な言葉を心の中で呟く。
それが日本人です。


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bkm
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