NOとは言えないそれが日本人 8


それから一週間。
何故か私はサーカスの練習をさせられた。

もう笑うしかない。あはは。

でも、ビーストと仲良くなれたのは嬉しかった。
ビースト優しいし可愛い。

てか、いつまで私はここにいればいいんだろう。
いいかげん、このサーカスに馴染んでしまいそうなんだが。
だってみんな優しいんだもん。面白いし。
悪い人ではなかった。むしろいい人。

だが、これは許すまじ。


「演じますのは、セブン・リング・サーカスの猛獣使いーービースト嬢とジャック嬢です!」


誰ですか、ジャックって。
そしてサーカスに入った覚えもない。

しかし、スポットライトが私とビーストに当てられたので、仕方なく観客に一礼する。

一週間お世話になったし、今日だけならしょうがないよね。うん。

ビーストがむちをふるった。


「Let’ play!」


その言葉と同時に私の身体は浮き虎の背中に乗る。
さらに、虎は私を乗せたまま、ゾウの上に乗った。さらにさらにゾウは私たちを乗せたまま樽わたりをする。

結構恐い。けど、私が騒ぐとさらに恐いことになるので笑顔のまま固まって観客を見る。

樽わたりが終わったあとは、クマの股の間に抱き締められすべり台。
観客からは実は私は人形なんじゃないか、なんて声もあがってる。

私は人間だよ。立派な。

一番恐かったのは火の輪くぐりをするライオンに首根っこを掴まれ、火の輪くぐりをしたこと。

いじめだと思った。


『そんな私が可哀想だとは思いませんか。クイーン。』


目の前にいるクイーンを睨む。


「いや、でもね、」
『言い訳はいりません。』
「名前。悪かったな。」
『ジョーカーは謝らなくていいよ。だって、あの話をしたのも全部計算だったらしいから。』


ジョーカーに笑顔を向け、クイーンには無表情。

ちなみに、この人ホワイトフェイスと賭けしたんだからね。私も巻き込んで。

負けたら私はサーカス団入団、さらに命令を一つ聞くそうです。

許さん。


「でも、名前はわたしのものなんだろう?」
『……あぁ、それについては訂正します。私はジョーカーのものです。』
「……意味、わかって言ってるのか?」
『?だってジョーカーのほうが優しいし。』


うんうんと頷いて言ったら、頭を撫でられた。

こういうところがクイーンとの違いだよね。
これでニコリとでも笑えば、ただのイケメン。
あ、でも、そんなジョーカーやだ。


『とりあえずは、クイーンが私に触るのを禁止します。触ったら、引きこもります。』


キッとクイーンを睨みつけて、私は自分の部屋にバンッと音を立てて閉じ籠った。

日本人だって言う時は言うんだから。

てゆか、クイーンは私を無理矢理盗ったくせに簡単にあげるとか言うな。馬鹿。

今度言ったら、本気で口聞かないからね。
ずっとジョーカーにひっついて顔も見ないようにしてやるんだから。

と、大事なことを言わないのも日本人。




「クイーン、なんであんな賭けをしたんですか。」
「ジョーカーくんは、わたしが負けると思うのかい?」
「……いえ。」


自信に溢れたクイーンの言葉に、ジョーカーは首を振る。


「それに彼女がどこにいってもわかるよう、盗聴器と発信機はつけているからね。大丈夫だよ。」


満面の笑みを見せるクイーンに、ジョーカーは相手にするだけ無駄だと早々に判断した。


「………で、明日はどうするんですか。」


無表情でジョーカーが聞く。


「わたしとジョーカーくんだけで行くに決まってるじゃないか!」
「名前は連れていかないんですか?」
「当たり前だろう?名前を連れて行ったら、すぐバレてしまうよ。」


ジョーカーはその言葉に動物たちに囲まれる名前の姿を思い出し、確かにと頷いた。



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