NOとは言えないそれが日本人 6


星菱邸におり立った時、すでにクイーンは警官の服装にかわっていた。
私は船で着ている服のまま。
すると、クイーンはごく自然な動作で可愛いモコモコのネコの着ぐるみを取り出した。


『……なんですか?』
「きみがいたら、危ないだろ?この着ぐるみに入っておきなさい。」
『……………』


あれ?こいつ、私と一緒に落ちたのって計算?
とか思っても時すでに遅し。

渋々とその着ぐるみを着て、クイーンに大人しく抱っこされた。
もう、文句言うのもめんどくさい。

犯行予告時間まで、あと三十分になったところで、門のほうからかすかに悲鳴が聞こえてきた。


「気をつけろ!」
「犬とネコが襲ってきたぞー!」
「落ち着け、クイーンの罠だ!」


その叫び声にまじって、犬やネコの鳴き声が聞こえてくる。

チラリと、クイーンを見たら首を傾げていたので、クイーンの仕業じゃないらしい。

クイーンが門の方へ走った。
そこには大勢の警官が犬やネコに襲われていた。
星菱邸の玄関の植え込みの影に隠れていたアナウンサーたちも犬やネコに噛まれたり引っかかれたりして全滅。

なにこれ、恐い。

一匹の犬が、クイーンに飛びかかろうとした。
しかし、その犬はクイーンの迫力に負けてあとずさる。

クイーンがキョロキョロと辺りを見渡した。
そして、なにかを見てクイーンがハッとなった瞬間、何匹もの犬やネコが私たちに襲いかかる。

と、思ったら、犬やネコは何故か私とクイーンを引き離した。


『え、』
「…名前!またあとでね!」
『えー…』


そのまま私は犬やネコたちの下敷きに。
にこやかな笑顔のクイーンは星菱邸の中に。

……あの人、私を生贄にしやがった…!!!

そのまま犬やネコたちが私の身体を尻尾振って舐めたり甘噛みしたりする。
一匹を撫でてやれば、他の犬やネコが自分も!自分も!と集まってくる。

……だれかへるぷ!

そんなことを考えていると、一匹の犬が私の着ぐるみの首を掴んでどこかに向かって歩き始めた。

ちなみに私の首を掴んで移動してる犬の後ろさっきまで、私に甘えていた犬やネコが列になってついてくる。

いや、本気でこわい。

そのまま犬におとなしく運ばれていると、ある一人の女の子の前で降ろされた。


「こんばんわ。」
『えーっと、こんばんわ?』


可愛らしい顔をした女の子がニコリと挨拶してきたので、私も一応挨拶し返す。

が、いまだにどういう状況なのかわからない。

てか、ここどこー。


「あなたはクイーンの仲間なんですか?」


そう聞かれて黙秘。
この子が警察だったら私、終了の合図だった。
まだ、刑務所には入りたくない。

黙秘していたら、いつの間にか私の意識はブラックアウトしていた。

どうしてこうなった。





その頃のトルバドゥール。

「クイーン!名前はどうしたんですか!」
「あ、忘れてた。」
「忘れてたじゃないですよ!彼女は一人で警察からは逃げられないんですよ!」

「大丈夫だよ。たぶん、名前はあの猛獣使いと一緒さ。」

「……その根拠はいったいどこから。」
「名前も猛獣使いのようだからね。いろいろな凶暴な動物(ジョーカーくん)に好かれるじゃないか。それを猛獣使いが放っておくわけないだろう?」
「………そう、ですね。名前は厄介な動物(クイーン)にも好かれますからね…」

【(この場合、どちらの動物も二人のことをさしますね。)】



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