『(どうしてこうなった。)』
何故か私の周りにはネコ、ネコネコ、そしてネコ。
そしてそのネコ地獄の中心には私から見ても、美人で麗人のような一人の男…クイーンがネコの毛を漁ってる。
写真撮ってICPOに突き出してやりたい。
後が怖いから絶対そんなことしないけど。
「クイーン、このネコたち、なんとかなりませんか……。」
背後から聞こえたジョーカーの言葉にもっと言ってやれ!と心の中で同意する。
だって私日本人だから。
チキンなんだよ。
「そうはいうけどね、ジョーカーくん。簡単そうに見えて、ネコのノミ取りというのは、なかなかむずかしいものなんだよ。ね、名前ならわかるだろう?」
『いや、それよりも、私の懐に入ろうとしてるネコってノミ付き?ノミ付きなんですか?』
今にも私の懐に入ろうとしてるネコたちがノミ付き、だと…?
嘘でしょ。私の体にノミがついたらどうしてくれるの。ねぇ。
必死で私に引っ付いてくるネコを退かそうとするけど、何回退かしても何回退かしてもネコが私の懐に入ろうとしてくる。
何故だ。
そんなことをやっていると、ヒョイと私の体が空に浮いた。
「大丈夫か?名前。」
『ぁ…ジョーカーありがと。』
クイーンとは違って紳士なジョーカーにニコリと笑いかける。
クイーンはジョーカーを見習ったほうがいいと思う。全体的に。
「とにかく、ぼくたちはこのネコに迷惑しているんです。どうにかしてください。」
【わたしからもお願いします。ネコの抜け毛で、トルバドゥールの空調整備が不安定になっています。おかげで、新しく空調チェックシステムを開発しなければなりませんでした。】
空気を凍らせるように冷たいジョーカーの声と天井から聞こえる無機質なRDの声に心の中で賛成する。
別にネコは嫌いじゃないけどノミ付きネコは無理。
それでなくたって、動物に擦り寄られるのに私にノミがついたらどうするんだ。
お風呂に閉じこもるぞ。
と、自分がお風呂に閉じこもったらを想像して首を振った。
来るわ。クイーンなら私が入ってても、一緒に入ろう!とか言って入って来るわ。
そんなことを考えている私の耳に、「ジョーカーくんもRDも名前も最高の友じゃないか。」と言う声が聞こえてきたので『あぁ、そうだといいですね。』とだけ返しておいた。
はっきりとは言わないそれが日本人。
『で、次の仕事はあるんですか?』
ないなら、さっさと私をこの船から降ろしてほしい。という言葉を飲み込んでネコを抱いたままのクイーンに言う。
すると、クイーンは憂いを帯びたような顔をつくってきた。
「名前……、この世界のどこかに、わたしの犯罪美学を納得させる獲物はあるんだろうか…」
「RD、モニターに高価な美術品や宝石の所有者をリストアップしてくれ。」
かんっっぺきにクイーンをスルーしながら、ジョーカーはRDに向かって話す。
さすがジョーカー。
スルースキルぱない。
実は日本人なんじゃない?
「“怪盗の美学を満足させるもの”という条件をつけて欲しいね。」
そんなのはさすがのRDにもわからないよ。
すかさず横から口出ししたクイーンに思わず突っ込みをいれた。
もちろん、心の中で。
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bkm