『では、よろしくお願いしますわ。杜若悠里さん。』
「……ああ。」
杜若悠里。何故かいきなり榊先生の姪になっていた謎の人物X。私の勘だと、トリップしてきた女の子。
あいちゃん、お姉ちゃんは早くあいちゃんに癒されたいよ…
ニコニコとお嬢様スマイル全開しながら、杜若さんに校舎内を案内する。テニス部を案内した時、舞原さんを見て「あれが逆ハー主…」とか呟いてた。全力で気にしないことにした。
スルーって大事ね!
『…と、ここで全部終わりですわね。何か質問はございますか?』
「ここのテニス部はマネージャーをとってるか?」
『……ええ。とってますわ。』
この女、偉そうだな。
杜若さんが、私のモロ嫌いなタイプだということが分かり、これから距離をおくことに決めた。
うん。とうぶん、部活は休部しよ。
杜若さんと別れて、生徒会室にあるソファでゴロンと横になる。
ああ、なんかいろいろ疲れたや…
「名前、さん…」
『ん?宗くん、どうしたの?』
ゴロゴロとしてる私に宗くんが近付いてきた。
いつからいたのか気になるところだけど、そこが宗くんクオリティなので気にしないよ!
「あの、明日の夜…に、パーティがあるそう、です…」
『うそ!?そんなの私、聞いてない!』
「三人とも、出席して、欲しいと…」
宗くんの言葉に疲れがドッと出てきた。
ああ、まだ始まってもないのに、なにこの疲労感。
『…あれ?もしかして、それって私と景吾のことでなんか決まったの?』
そういえば、この前お父さんと景吾のお父さんが、二人で婚約について話してたなぁ、と思って宗くんを見ると、複雑な顔をした宗くんがそこにいた。
『……そ。じゃあ、跡部は舞原との婚約を阻止するために、私との婚約話を進めることにしたってわけだ。』
「……ウス。」
『あはは、宗くんがそんな嫌そうな顔しないの!』
悲しそうな、さみしそうな顔をしてる宗くんの頭をグリグリと撫でる。
もう!宗くんは可愛いんだから!
『別に本当に将来結婚するわけでもないんだし。ね?それに、宗くんは私たちについてきてくれるでしょ?』
「!ウス!」
弟のような宗くんに満面の笑みを見せた。
あー可愛いな、もう!
「気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ気持ちわりぃ」
そのあと、宗くんとお茶してたら、キャラ崩壊気味な景吾が入ってきた。と、思ったら、私の腰に抱き着いてブツブツとなんか呪いの言葉を出してる。
『なに、なにがあったの?』
「…あのクソ女が、俺様の素肌に触りやがった。」
『え。それだけ?』
「それだけ?じゃねぇよ!」
私の腰に抱き着きながら、私を仰ぎ見る景吾は、今にも泣きそうな顔をしてた。
え、ちょ、どんだけイヤだったの?!
『あーあー!泣かないの!ほら、今日は私が一緒に寝てあげるから!』
「ほんとか?」
『あ、あいちゃんもいるけど。』
「しょうがねぇから、許してやるよ。今日、名前の家に行くからな。」
『はいはい。』
泣きそう景吾が満面の笑みに変わる。
なにこいつ、可愛い。
宗くんと目を合わせると笑みを零しながら、私と宗くんは紅茶を飲んだ。
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bkm