甘味依存症


私の幼馴染はとても影が薄い。
どれくらいかっていうと、いてもあんまり気付かないくらい。それは幽霊並みに薄い。
まあ、私はなぜか気付くんだけど(これを言ったら「愛の力です。」とか雰囲気ドヤをされたから頭殴っといた。きっと頭のネジをどこかでなくしたんだと思う。いつもは普通なのに。)
んで、そんな幼馴染は影が薄いことを利用していろいろ私に都合の悪いことを作る。

誰か助けてほしいです。切実に。




暑苦しい…

ベッドで寝ていると腰に圧迫感。
それを感じて重たいまぶたを開ける。


『またか…』


目の前には幼馴染の胸板。
腕はがっしりと私の腰を掴んでる。

…これってさぁ、不法侵入にならないのかな?
いくら家が隣でも中学生なんですけど。いつまで私のベッドに潜り込む気だ。

すぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てる幼馴染にため息。
いい加減苦しいので名前を呼んで身体を揺さぶる。


『テツ起きて。苦しいし、暑い。』
「……ん、」
『ん、じゃないから。』


起きる気配が感じられない。
てか、私を抱き締める力が強くなった気がする。ダメだ、こいつ。

ちょっとイラッときつつ、今度は思いっきりテツの胸板をバシンッと叩いた。


「、痛い…」


ボソリと呟いてやっと起きたテツを自分から剥がして笑顔を向ける。


『テツおはよう。早く私の部屋から出てけ。』
「もっと優しく起こしてもらいたいんですけど…」
『起きないお前が悪い。てか、もう中学生なんだから私の部屋に潜り込むのやめなさい。』
「無理です。」


こっちが無理。
そう言ってやりたいけど、もう今さらなのでスルーさせてもらう。

さすがに生まれた時から幼馴染やってたら諦めっていうのも覚えるよね。


「着替えるんですか?」
『うん。だから出てけ。』
「ボクのことは気にしないでください。」
『気にするよ?!なに言ってるの?!』
「……ちっ」
『ねぇなんでそんなスレたの?ねぇ。小さい頃は素直で可愛かったのに…!』


思わず床に膝をついて嘆きたくなる。
無表情で舌打ちしたよ。こいつ。
しかも平然と覗きしようとする幼馴染って…!


「じゃあ、しょうがないからボクも着替えてきます。また下で会いましょうね。」
『しょうがなくないから。普通だよ。…じゃ、玄関でね。』


テツが窓から自分の部屋に戻ったのを確認してからしっかりとカーテンを閉める。
前にカーテン閉めてなかったら覗かれてたのは驚いた。ってか、引いた。
あ、窓の鍵閉めろよとか思った人。そんなこととっくにしてる。それでもいつのまにか入ってくるテツに文句を言ってください。お願いします。どんなスキルがあるんだ、あいつ。

私と黒子テツヤはいわゆる幼馴染という関係。
断じて、付き合ってはない。
幼馴染ラブストーリーなんざ古いんですよ。

そんなことを考えつつ、真新しい制服に身を包む。
今日から私も中学生。

とりあえず、中学での目標は静かに慎ましく生きることにしたい。
疲れることは勘弁。

あまぁい蜂蜜を舐めながらそんなことをぼんやりと思った。

それからすぐにテツのことを思い出してなんか萎えた。


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