「にーちゃ、にーちゃ、あうっ、にーちゃ!!」
転んで泣きそうになってる実くんの頭をポンポンと撫でる。
『実くん、泣かないで?ほら、わたしと探しに行こっ!』
「あーうっく、」
さて、私と実くんは今どっかのホテルにいます。
なんでこんなことになったのか、それは日曜日まで遡る。
『おばあちゃん、それがはるみさんのお見合いしゃしん?』
「そうよー!優しそうな方でしょ?」
そう言って実際の年齢より若干若く見える私の祖母はニコニコとお見合い写真を私に見せた。
ちなみに、私とおばあちゃんは現在私を預けるために榎木家に向かってる途中である。
そのついでに、春美さんにお見合いの話を持ちかけるらしい。
いやいや、おばあちゃんは春美さんに求めすぎでしょ。春美さん子ども命じゃん。由加子さん命じゃん。絶対結婚しないよ。
「木村さん…、妻が亡くなって一年と経っていないんですけど…」
ほら。やっぱり。
私の考えた通り、春美さんはお見合い写真を見てすごく困った顔をしてた。てか、実際困ってた。
で、それを外で水やりをしながら見てた拓也くんも心配そうに春美さんを見る。
『たくやお兄ちゃん、はるみさんのことしんぱい?』
「え?…うん。ちょっとね。」
そう言って苦笑いする拓也くんにニコッと笑う。
『だいじょぶだよ。はるみさんは、ゆかこさん一筋だもん。』
「そう、かなぁ。そうだといいけど…」
不安そうに呟く拓也くんの手をギュッと握ると、水やりを再開した。
そして今日。
まあ、日曜日はあの後実くんが拓也くんを気絶させたりして大変だったのはまた後日。
十月十日。拓也くんの誕生日の体育の日。
おばあちゃんがお見合いをきちんと断らなかったせいで、春美さんがお見合いに行くことになってしまった。
その時の拓也くんの落ち込みようはすごかった。
そして、その様子を見てた私はすごく帰りたかった。てか、拓也くんの誕生日なのに、部外者いたらダメじゃない?まあ、それは去年もなんだけど。
私一人だけ部外者って罪悪感はんぱなかった…!
で、私たちはホテルにやってきた。
拓也くんはお見合いをとっても止めたかったみたいだった。ちなみに、私の断るひまは毎回のようにない。
そして冒頭に戻るのであった。
キョロキョロと辺りを見渡して、どこかにカモ……じゃなくて人のよさそうな人がいないか探す。
するといた。
今にも泣き出しそうな実くんの手を引いてお兄さんのもとに行く。
『あ、あの…』
「ん?どうしたんだ?」
『おっ、おにいちゃ、んがっ、』
ヒクッと泣き(真似)しながらお兄さんを上目遣いで見る。
心の中でほくそ笑んでるのは秘密である。
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bkm