深い深い樹林の奥にそれはあった。
アルおじいちゃんに外出許可を内緒でもらってから私はレギュラスがいるであろう場所を目指して樹林を突き進んでいた。
レギュラスがいるであろう場所は、サラの別荘。サラっていうよりスリザリンの別荘?なのかもしれない。
サラを産んだ母親は唯一ヴォルデモートが逃れたスリザリンの継承者だった。まあ、私が産まれたと同時にサヨナラしちゃったですけど。
で、彼女が私を産む前に隠れ家として使っていたのが今回目指すところ。彼女のお腹の中にいた時から記憶がある私は、サラのときに彼女の魔力を辿ってそこに辿り着いた。
そこはパーセルマウスを話せる人しか行けないですけどね。
今の私はスリザリンの継承者ではないけど、何故だかパーセルマウスは先天的に持っている。きっとサラの時の能力がそのまま私になったからだと思う。
まあ、ラッキーですよね。
そんなことを考えている間に、私が目指していた場所が見えてきた。
『みーっけです。』
何もない開けた広野。
そこが私の目指していた場所。
【開きなさい。私が主が帰ってきたのだから。さぁ、早く。】
蛇語で言うとアラ不思議。
なにもなかった場所には立派な屋敷。
にっこり笑うと、久しぶりの後輩と家族に会うために、私は足を踏み入れた。
すると、私の目の前には一人のしもべ妖精が立ちはだかった。
「誰ですか!サラ様のお屋敷に入ることはこのユキジめが許しませんよ!」
『ユキジ…?本当にユキジです?』
「?ユキジはサラ様にいただいたお名前でございます!貴方は何者ですか!」
懐かしさが身体から溢れる。
よかった、彼女がまだ生きてて。
私の、サラの家族。
『ユキジ、ごめん、ごめんなさいです。もう貴女はこの屋敷を捨てていいのです。サラの命令は終わりです。貴女は自由なのですよ。』
「なにを…?このユキジのご主人様はサラ様です!貴女にそんなことを言われる筋合いはございません!」
……どーしよーです。
だーれーかーたーすーけーてーでーすー
「ユキジ…誰か来たの…?」
「あぁ…!レギュラス様はどうかお逃げください!貴方様が捕まればユキジはサラ様にお会いできません!」
『……』
レギュが生きてたことはとても嬉しいです。
けど、どうしましょー。
「君は…だれ?どうしてこの屋敷に入ることが出来たの?言わないと…殺すしかないんだけど。」
『お、おお落ち着いてくださいです!杖!杖おろしてくださいです!やましいことはなにもないですぅぅう!!!…あ、でもちょっとだけあるかもしれないです。ごめんです。』
そういえば学生時代にレギュラスが私より背が高くてモテモテだったことに嫉妬して、レギュラスのおやつを内緒で食べて、それをシリウスに押し付けたのを思い出した。
ちょっとだけやましいことがあったので謝った。
「…ユキジ。サラ先輩は死んだんだよね。」
「えぇ、えぇ…サラ様は例のあの人に殺されたのです。にっくき男です…!」
『杖離してくれないです?スルーするです?』
「君、名前は?」
かんっっっっぺきにスルーされたですね。
レギュラスはいつまでたってもレギュラスだったです。
……身長、縮めばいいのにです。
『ナマエ リンドウです。…それはいいから離してくださいです。全部話すですから。』
まあ、もともとレギュラスには全部話そうと思ってたし、しょうがないです。
……はぁ。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
『私はサラ・レイニーでもあるです。てゆか、生まれ変わり?っていうやつです?うん。まあ、そんな感じです。あ、私は今ナマエなのでそう呼んでくださいです。てゆか、ユキジはレギュラスが来たら自由になっていいって言ったのにまだいるですか?自由になりたいって言ってたのに。』
ちなみに今は屋敷の中のリビング。
私が全部話すって言ったら連れて来られた。
なので、私が思う存分ブツブツと文句を言っていると、ユキジに抱きつかれた。
「あぁ…!貴女様は確かにユキジのご主人様です…!確かにユキジのご主人様はユキジに自由をくださいました…ですが、ユキジはご主人様といることもまた幸せなのです!自由なのです!ご主人様がいない間もレギュラス様はユキジによくしてくださいました…!ですが、ユキジはもう一度、もう一度ご主人様にお会いしたかったのです…!あぁ…!ここで待っていてよかった……!」
そう言って何度も何度もよかったと呟くユキジに申し訳なく思う。
だって私が彼女を一人にしたことには違いないのだから。
ポンポンと私に抱きつくユキジの背中を叩きながら、レギュラスの反応が怖くてチラリと見る。すると、バッチリと目があってしまった。
『………』
「……………」
『………………、』
「……僕は、」
『はいです!』
恐い、腹黒恐い。
てゆか、レギュラスの声低すぎです。
イケメンボイスです。あれ?もしかして、相当怒ってるです?
「僕は、貴女に文句を言ってやりたいです。何故、僕を助けて自分は死んだんですか。貴女が死んだあと、僕がどういう気持ちだったかわかりますか?わかりませんよね。だいたい貴女は無鉄砲すぎるんです。何回無理をするなと言いましたか。それより、来るならさっさと来いよ。何年待たせてんだよ。」
『ご、ごめんなさいで「僕のことを忘れて十一年間のほほんと過ごしたんですか。だから貴女はいつまで経っても単細胞なんですよ。この愚図。貴女が死んで僕とユキジはとても悲しんだんですよ。その張本人が生まれ変わったあと、僕たちを忘れていたとは……最低だな。」うわぁぁぁぁぁああんん!!!!!!謝ったじゃないですかぁぁぁあ!!!!ごめんなさいですぅぅぅぅうう!!!!』
もうやだです。レギュラス恐いレギュラス恐い。
しかも、ところどころ敬語外れてるです。お口が悪いです。
「とりあえず、覚えててくださいね?」
『………はいです』
腹黒恐いです……
prev next
bkm