ダンブルドア先生から注意をもらってから、みんながそれぞれ好きなメロディーでホグワーツの歌を歌う。
私はそれよりもダンブルドア先生の言った言葉と自分の記憶が気になっていた。

私の前前世の記憶、ハリー・ポッターという児童小説があった世界の記憶は薄れてきている。前前世の記憶で覚えているのは、自分が嫌われて苛められて自殺したということくらい。確か双子の兄がいたのは覚えてる。でも、何故自分が嫌われていたのかは曖昧だ。
そんな訳で、私はハリー・ポッターという小説の記憶が薄れてきていた。でも、ここに来てから妙に小説の記憶だけがクリアだ。小説の内容は思い出せる。でも、誰がどうなるのかだけは思い出せない。
小説の世界でハリーとロンと仲良くしていた女の子。その子の名前も思い出せない。

これは一体どういうことなんだろう。


「名前、寮に行くぞ。」
『ぇ、あ、あれ?歌はもう終わったです?』
「とっくだ。」


私が考えごとをしている間に歌は終わってしまったらしい。
…気づかなかったです。
考えごとに集中しすぎましたですね…

それからは、スリザリン生は監督生についてスリザリンの寮がある地下牢へ向かった。

それからドラコと別れて指定された部屋に入る。
てっきり同室の人がいるかと思ったら誰もいなかった。


『……あれ?』


前世では私がスリザリンの後継者だとダンブルドア先生が知っていたからそれを考慮して一人部屋だったけど、今回も一人部屋になるなんて思わなかった。
それに私の勘違いじゃなければ、この部屋は私が前世で使っていた部屋でもあるはず。


『……たぶん、ダンブルドア先生にはバレてるですね。』


はぁ、と一つため息をつくと、私は部屋にある暖炉からダンブルドア先生の部屋へと向かう。
もし、これが本当に前世で使っていた私の部屋ならこの暖炉はポートキーになっているはず。
私が暖炉に手を翳し魔法を使うと思った通り、ダンブルドア先生の部屋に繋がった。


『はじめまして、こんばんわです。ダンブルドア校長先生。』
「こんばんわ。……サラ。」


私がいきなり現れて驚いたようすのダンブルドア先生にあいさつをすると、ダンブルドア先生はふわりと笑うと、私の前世の名前を紡いだ。


『やっぱりバレてたですか。いつからです?』
「確信したのはついさっきじゃよ。君はサラしか知らないポートキーでここに来たからのぉ。」
『あ。そういえばそうですね。まあ、もともとダンブルドア先生には言おうと思ってたからいいです。』


ダンブルドア先生にはたくさん聞きたいことがあった。そのためには、私が聞くのに不自然なこともあったから、私の前世はサラだと言おうと思ってたから。


「積もる話があるじゃろう。そこに座りなさい。」
『失礼しますです。』


ダンブルドア先生に椅子を勧められので素直にそれに座る。
それから、ダンブルドア先生が杖を一振りすると、淹れたばかりのような紅茶が出てきた。それを一口飲んでから、私は本題に入った。


『私が一番聞きたいのは私が死んだ後のことです。私、マグルだったので魔法世界のことは全然情報入って来なかったから全然わからないんです。』
「そうじゃったか…。お主が死んだ後、お主は英雄になったよ。ハリーと同じく例のあの人を退けた者として。それから、ピーターが死んだのは知っておるか?」


ダンブルドア先生の言葉にピクリと身体を動かす。
ピーター、ピーター・ペティグリー。
私の記憶が正しければ彼はまだ死んでいない。


『彼はまだ死んでないですよ。それに、リリーとジェームズの居場所をバラしたのはシリウス・ブラックじゃないです。』
「…なんじゃと?」
『シリウスは秘密の守人をピーターに譲ってるです。だから、シリウスがアズカバンにいるのは間違いです。』


私の言葉にダンブルドア先生は息を飲む。
ピーターが秘密の守人になったということはその時に居合わせた私たちしか知らなかった。だから、ダンブルドア先生が驚くのも無理はない。


『でも、今すぐにシリウスをアズカバンから出すのは無理です。たぶん、彼は脱走を図りますです。でも、ダンブルドア先生はシリウスを疑わないでくださいです。彼は本当にジェームズたちが大好きだったんです。信じてたです。だからこそ、ピーターに秘密の守り人を譲ったです。今、彼はとても辛い状況にいるです。リリーとジェームズという大切な友達を亡くして、自分は無実の罪で牢獄しているんですから。』


シリウス、早くシリウスにも会いたいです。リーマスにも会いたい。本当はそこにリリーとジェームズもいれば最高なんですけど…


「そうだったか…シリウスには悪いことをしたのう…。」
『まあ、でもシリウスはセブルスをイジメていたし、案外図太そうです。だから、そこまで心配しなくてもだいじょぶです。たぶん。』


私がそう言うと、さっきまで緊張していた空間がほんのりと明るくなったのでよかったです。


「そうじゃ、サラ、君は勘違いをしておる。」
『?』


そう言って微笑んだダンブルドア先生に首を傾げる。
私、なんか変な勘違いしてたです?


「リリーとジェームズはまだ死んではおらんよ。」
『!!!??ぇ、あ、どゆ、ことですか?』


喉がカラカラする。
死んでない?リリーとジェームズが?


「お主がリリーとジェームズにかけていた保護呪文は覚えておるな?」
『ぇ、はい、です。』
「そのおかげじゃ。リリーとジェームズは死の呪文を食らったが、サラが死ぬ前にかけていた保護呪文のおかげで二人はなんとか死なずには済んだ。あの日以来、二人はずっと寝たままではいるがまだ生きておるよ。」


ダンブルドア先生はまあ、秘密のことなんじゃがと付け足すと私にウインクを投げた。
私の瞳からははポロリと涙が零れる。
あの時、私が命を捨ててまで守ったことは無駄じゃなかった。
まだ目覚めてないかもしれないけど、絶対に彼女たちは目覚める。
だってリリーは私の幼馴染で親友だもん。
ジェームズだって負けず嫌いな頑固者なんだから、死の呪文に負けるはずない。


『よかった…!本当によかったです……!』
「君たち三人がヴォルデモートと対峙したと聞いて本当に生きた心地がしなかった。もうサラはいないが、わしは生まれ変わりでもなんでももう一度サラに会えて嬉しいのぉ。」
『お、じいちゃ、』


その日、私は久しぶりのアルおじいちゃんとの再会に大泣きしながら抱きついてそのまま寝た。
次の日、遅刻しそうになったのは言うまでもないです。



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