それから、わたしたちはカイナシティに着いた。
とにかく、とにかく早く船から離れたくて、コウガをモンスターボールにいれて、シオンを出す。
そして、わたしは急いでカイナシティから離れる。
空を飛ぶは使えない。
だから、何日かかけてミナモシティまで歩いて行くしかない。
それに、きっと、ポケモンセンターもなるべく避けた方がいいと思うから。
…早めに着けばいいな。
それに、誰にも会わないようにしないと。
『シオン、よろしくね。』
まるで、返事をするかのようにわたしの足に擦り寄るシオンの頭を撫でると、わたしは一歩110番道路へ踏み出した。
ゴクリンやラクライをシオンの念力で次々と倒して行く。
虫よけスプレーを買っておけたらよかったんだけど、時間がなくて残念。
そんなことを考えながら、シオンと一緒に110番道路を進んでいると、にょきりと男の子が出てきた。
「Butiful!」
『え、』
「そのポケモンの毛並み!戦い方!どれも美しい!ちょっと見させてもらっても?」
『ぁ…っ、』
わたしが否定の言葉を出す前に、男の子はシオンをキラキラとした瞳で見る。
やだやだやだやだ…!
なんで、会っちゃうの、?
会いたくなかったのに。
巻き込みたくないのに…!
そんなわたしの願いなんて届かずに、シオンを見て満足したらしい男の子はクルリとシオンからわたしに視線を移す。
そして、ニコリと人の良さそうな顔で笑った。
「ボクはルビー。よろしくね。」
『っ…!』
ゴクリと息を呑む。
あぁ、当たってしまった。
やっぱり彼は主人公だったの。
それを考えて自己嫌悪。
また、わたしはこの世界をゲームと勘違いしてしまってる。
彼は彼なのに。主人公として、キャラクターとしてとしか見れないわたしが嫌い。
「ルビー!なにしとっとー!」
「げっ…サファイア…」
「げっ、とは失礼ね!」
『…ん、で、』
また、主人公なの、?
会いたくない。
もう、いや。
「んー?ナンパしとるの?」
「失礼なのは君だろ!ナンパじゃないよ!」
「まあ、いいや。あたしはサファイア!よろしくね!」
そう言って、サファイアと名乗った彼女も、ニカリと笑う。
なんで、わたしなんかに関わろうとするんだろう。
わかんない、わかんないよ。
ねぇ、わたしは何か悪いことしたのかな。
会いたくないのに。
巻き込みたくないのに。
どうして彼らに会っちゃうんだろう。
お願いだから、わたしに誰にも知られずに復讐させて。
『シオン、行こう。』
「え?ちょ、ちょっと!どうせなら一緒に行こうよ!」
「そうそう!旅は道連れ世も道連れっていうばい!」
「それを言うなら旅は道連れ世は情けだろ。」
「……どっちも同じと。とにかく!一緒に行こう!」
『…ごめんなさい。わたし、すごく急いでるから。』
ここで、彼らを冷たく引き離さなくちゃ。
仲良くなったら、きっと弱いわたしは甘えちゃう。
だから、
「女の子一人じゃ、危ないよ!サファイアじゃないんだから!」
「そうそう!……ってルビー!どういうことたい!」
「言葉の文だよ。ね?一緒にどうだい?」
わたしなんかに優しくしないで。
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bkm