船に乗れた。チケットとかはなくてもお金を払えば乗れることができた。
船乗りさんに言われた自分の部屋のベッドで横たわり、モンスターボールからコウガを出す。
すると、コウガは私に擦り寄ってきてくれた。
『コウガ…今まで出せなくてごめんなさい…』
「ーー!」
大丈夫、とでも言うように私の頬を舐めるコウガに思わず笑顔が零れる。
コウガは色違いのグラエナ。色違いはとても珍しいから狙われる可能性がある。だから、今までコウガを出せなかった。
擦り寄って私のベッドの上にまで来るコウガを抱き締めながら、私は深い眠りに入った。
*-*-*-*-*-*-*-*-*
紅い紅い、もう何度目かになるかわからない夢を今日も見る。
解放されたくて、でもされなくて、
幸せに、なりたいなぁ、なんて…
『ん…』
目が覚めると見たことのあるような男が私を覗き込んでいた。
それに慌てて起き上がる。
「あ、目が覚めたんだ。」
『…、エンジュの、』
なんでここにエンジュのジムリーダーがいるの…?
ボーッとする頭でわたしがそう呟くと、彼は綺麗な笑顔で笑った。
「僕のこと知ってたんだ。僕はマツバ。君の言う通り、エンジュシティのジムリーダーだよ。」
ダメ、ダメだ、ダメ。
にっこり微笑むマツバさんが恐くて、ゾクリと背筋が震えた。
ベッドの上でちょっとでも離れられるように、わたしは背中と壁をくっつけた。
コウガがマツバさんに向かって威嚇するように唸る。
「酷いなぁ。そんな恐がらなくてもいいのに。」
『っ、な、なんで、マツバさんはここに…?』
マツバさんが顔を近付ける。
「視た、からだよ。」
『み、た…?』
「ふふ、そうだよ。レッドくんやゴールドくんが僕に依頼してきてね。」
その名前にビクリと肩が震える。
恐い恐い恐い恐い。
もうなにがなんだかわからない。
グルグルグルグル頭が回る。
「あ、言ってないから大丈夫だよ。安心しなよ。」
『っ、』
「そんなに震えて…、可愛いね。」
『ぃやっ、』
わたしに近付く彼が怖くて、思わず叫ぶように彼を否定する。
もう、関わりたくない。
誰とも関わりないの。
わたしは、一人で、復讐を、
「…ま、いっか。」
なにかを考える素振りをしてからわたしから離れた彼に心底安心して息を吐く。
『出てって、ください…、』
「うん。出てくよ。…あ、確かイッシュ地方に行くんだよね?」
それを否定しても、この人には全部バレてる気がしてコクリと頷く。
すると、彼は何かを含んだ笑みを見せると部屋を出て行った。
『ぅー…、』
出て行ったとたんに、ボロボロと涙が出てくるのはなんでなんだろう。
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bkm