三月ウサギ 20


目が覚めるとわたしはまたベッドに横たわっていた。
ずきんずきんと痛む頭を抑えながらボーッと部屋を見渡す。

わたし、なんでここにいるんだろう?

そんなことを考えていると、ガチャリと扉が開いた。


『ぇ…、』
「あぁ、目が覚めたか。体調はどうだ?」


そう言ってわたしの額に手を当てる彼はわたしの識ってる人で、


『なんで、』
「なんだ?」
『っ、』


なんで、なんでここに金銀のライバルがいるの…!
下唇を噛みながらそう叫びたいのを我慢する。

やだやだやだやだ!もう逢いたくない…!巻き込みたくないのに!


『あの、わたしならもう大丈夫ですから、』
「…いや。お前が治るまでここにいるからいい。…あぁ、俺はシルバーだ。倒れる前のこと、覚えているか?」
『…ごめんなさい。』


彼に言われて自分が倒れる前のことを思い出そうとしてみるけど、イッシュ行きの船がないと言われたことしか覚えていなかった。

…そうだ。イッシュ行きの船がないんだ…
行かなきゃ。
早くイッシュに向かわなくちゃ。

ズキンズキンと痛む頭を抑えながらベッドから起き上がる。
すると、シルバーに抑えられまた寝かされた。


『な、』
「お前は風邪を引いてるんだ!安静にしてないとダメだろ?!」
『っ、でも、行かなきゃ、』


風邪?そんなの関係ないの。
わたしは私のために早く行かないと。
復讐の、ために、


「それは復讐のためか?」
『!?っ、なんで、』

なんでそれを知ってるの?

驚いて彼を見る。
すると、彼は罰が悪そうに私から目を逸らした。


「お前が…、倒れる前に呟いてたんだ。」
『うそ…』
「本当だ。…なぁ、復讐なんてやめろ。復讐してなんになるんだ?意味、ないだろ。」
『っ、』


シルバーの言葉に耳を塞ぎたくなる。
意味がない?そんなのわたしが一番分かってる。分かってるよ。

なんになるか、なんてわかんない
でも、きっとわたしの力にはならない。
わたしには意味のないもの。

でも、でもでも、それでもわたしは、


『復讐、しなくちゃいけないの、』
「っ、」
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。でも、わたしのことはほっといて。わたしのことは忘れてください。ごめんなさいごめんなさい。』


わたしは近くにあった自分のモンスターボールからリオンを出すと、彼目掛けて電磁波を繰り出した。
彼が麻痺して片膝をついてる間に、わたしはベッドからおりて自分の荷物をまとめる。
それからポケモンセンターから逃げ出した。


『リオン、早く船に乗ってイッシュ行かなきゃ。…ごめんね。ごめんね。付き合わせてごめんね。』
「ーー、」


涙がボロボロと零れていることに気が付いていた。
でも、わたしにそれを拭う資格があるのかわからない。
あぁ、わたしなんて消えてなくなればいいのに。


そんなことを考えながら、わたしはズキズキと痛む頭と熱くて苦しい身体に鞭打って乗船場まで走った。


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bkm
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