マサキさんの家から出て丸一日。
わたしはやっとアサギシティについた。
一息ついてからわたしとリオンと一緒早足で乗船場まで向かう。本当はシュリの空を飛ぶを使えればよかったけど、バレたらって思っちゃうと恐い。
…弱いわたし。
乗船場につくと、大きな船乗りの男の人が入口を塞ぐように立っていた。その人に、おそるおそるわたしの目的地のことを聞く。
『あの、イッシュ行きの船って出てますか…?』
「イッシュ地方ですか?イッシュ行きはシンオウ地方まで行かないとないですよ。」
『え…、』
うそ、
茫然としながらわたしは俯く。
じゃあ、シンオウまで行くしかないってこと?
でも、そんなの、
『あ、あの、じゃあ、シンオウ行きの船はあるんですか?』
「いえ。船はホウエン行きかカントウ行きか一つしかないですよ。もし、イッシュに行きたいのであればホウエンのカイナシティに着いてからミナモシティに行き、シンオウ行きの船に乗り、シンオウのキッサキシティに着いたあとに、ナギサシティのイッシュ行きの船に乗れば行けますよ。」
『そ、うですか、』
船乗りさんのその話を聞いて泣きそうになりながら、わたしはフラフラと何処に行くのかもわからず歩く。
「ーー、」
『リオン…、』
心配そうにわたしを見つめるリオンの頭を一撫でしてから、わたしは近くにあったベンチにうずくまる。
ぐわん、と頭が揺れるようだった。
恐い、すごく恐い。
もしもいろんな地方に行って、主要人物の人たちと知り合っちゃったら?
もしもレッドたちが今だにわたしを探していたら?
もしも、私を殺した人に復讐できなかったら?
ぐるぐるぐるぐると、嫌なことしか思い浮かばなくて、
すごく、泣きたくなる。
「…おい、体調が悪いのか?」
『、ぇ…?』
ベンチで体操座りをしながらそこに顔をうずめていると、頭上から声が降ってきた。
それに、顔をあげるとそこにいたのは私が逢いたくなかった人がいた。
『また、なの?』
「は?なにがだ?」
『もういやなのに、いや、しにたい、』
「お、おい、」
『あぁ、でも、しねない、ふくしゅうできなくなっちゃう、それはだめ、』
ぐるぐるぐるぐるぐるぐる、
自分がなにを言ってるかわからない。
こんなこと言うつもりじゃないのに、
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる、
あれ?わたしは私?それともわたし?
『あ、れ?おかーさんは?おとーさんは?どこ?わたしをおいてどこにいくの?』
「っ、?!」
『私がおいていくの。わたしだけひとり。ごめんなさいごめんなさい。』
そうなの。わたしが置いてかれたんじゃない。
わたしが置いて行ってしまったの。
ぜんぶ。大切なものすべて。
「お、おい、」
『ごめ、なさい…だれ、かたすけて、』
暗闇の中、わたしは結局ひとりだった。
???Side
そう言ってふらーっと倒れた女を受け止める。
別に、助けたわけじゃない。
ただ、この女の言ってたことが気になっただけ。
彼女の手持ちであろうサンダースを彼女の腰に付いていたモンスターボールに入れると、女を横抱きにしてポケモンセンターに向かった。
ポケモンセンターに行って女を見せると疲れからくる風邪だと言われた。
それから女をベッドの上に寝かせると、自分はその近くの椅子に座って死んだように寝る女を見る。
女が言っていた【復讐】という言葉。
それはかつて自分が成し遂げようと思っていたものだった。
まあ、それもあの四人組のせいでやめたんだが。
昔の自分と同じだったからかもしれない。
俺がこいつを助けたのは。
「それにしても、」
なんでこの女は助けを求めていたんだろうか。
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bkm