えーっと…
「今日からテニス部マネージャーになる猫渕名前だ!文句は受け付けねぇぞ!」
なんでこんなことになったんだろ?
『あの、鳳くん。私、ここに来るだけで良かったんじゃないんですか?』
「最初はそうだったんだけど…琉歌先輩が…」
夢見琉歌先輩。
その名前が出てビクリと身体を震わす。
私が河川敷に住んでることを知ってて、脅してきた先輩。
恐い、逃げたい。
でも私がみんなを護るって決めたから逃げられなくて、
「名前ちゃんっ!」
語尾にハートがつくんじゃないかってくらい甘い声が私の後ろから聞こえた。
恐い恐い恐い。
でも無視することもできないから、私はクルリと振り返る。
するとそこにいたのは夢見琉歌先輩だった。
「じゃあ、さっそく説明するからこっちに来てねぇ!」
『ぁ…う、はい…』
ギリギリと手首を痛いくらいにギュッと掴まれる。
その痛みに生理的な涙が出そうになるけど、唇を噛んでそれを堪える。
その姿を見て楽しそうに嗤う夢見先輩にまた恐怖を感じた。
鳳くんから離されレギュラーの人が視界に残るなか、最後に見えたのは私を心配そうに見る赤だった。
『あ、あの、』
「なぁに?」
『な、んで、私がここに…?』
二人っきりの部室でおそるおそる聞く。
すごく恐い。でも、強くならなきゃ。
キッと私は前を見据える。
「あはっ、なにその顔ぉ?マジウケるんですけどぉ!」
『っ、』
「あんたはねぇ、琉歌の玩具になるの。」
『!?ど、どいうこと、です、か?』
クスクスとおもしろおかしそうに嗤い始めた。
さっきまでと全然違う雰囲気の夢見琉歌先輩にビクリと震える。
もう泣きそう。なんで私こんな人に捕まっちゃったの?
「前、学校辞めたいって言ってたでしょぉ?だからぁ、琉歌がそれ叶えてあげるのよぉ。」
『なっ、』
「それにあんたって、傍観主なんでしょぉ?今のうちに潰しとかないとねぇ。あんたなんかに壊されちゃ笑えないしぃ。」
傍観主?壊す?
なに言ってるの?意味、わからない。
『な、んのことですか、?』
「…惚けるんだぁ。ま、いいけど?これから琉歌の命令に逆らったら荒川のこと警察に言うからぁ。それにぃ、琉歌の家ってお金持ちだから河川敷を買うくらい簡単なんだからねぇ?」
そう言って嗤う夢見琉歌先輩に私の身体は震えが止まらなかった。
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bkm