三月ウサギ 3


『シュリ…もうちょっと早くお願いできる?』
「ーーー」


シュリはわたしの言葉にまるで了承と言うように首を縦に振ると更に早く飛んでくれた。
レッドとグリーンには黙って出て行ったから怒ってるかもしれないな、と風に当たりながら考える。
本当は言ってから行こうとした。でも、怖かった。離れたくなかった。二人は優しくて、わたしを甘えさせてくれて大好き。きっと依存してた。
だから、よけいに離れなくちゃいけない。もうあの二人に迷惑をかけちゃいけないの。


『ごめんなさい、』


わたしの考えることがレッドとグリーンにとって、“裏切り”の行為なんて知らなかった。




気持ちいい風を感じながら主人公が旅立つ街ーワカバタウンに降り立つ。


『シュリ、ありがとね』
「ーー!」


シュリの顔にキスをするとモンスターボールにシュリをもどした。
シュリをもどして、リオンをボールから出す。すると、リオンはわたしの足に擦り寄ってくる。それが嬉しくて、わたしは自然と顔が笑顔になる。


『リオン行こっか』
「ーー、ーー!」


ここの風が気持ちいいのかリオンはご機嫌のようで心なしかリオンの足も浮きだっている気がした。


ワカバタウンの中でも一際目立つ研究所。
そこにいるウツギ博士からコガネシティにあるマサキのところまで荷物を届けることがわたしがここに来た理由。

…転生してから十年経った時、あちらでやっていたゲームと同じようにレッドとグリーンは旅立った。そしてわたしも。
そのおかげで、今の仲間たちには逢えたし、旅立ったことは後悔してない。けど、わたしはその旅の時には、いつもあの二人と一緒だったから。甘えきってた。
オーキド博士もそれを心配してくれたんだと思う。
だから、今回わたしはここに来たんだ。二人に甘えるのはもうおしまい。
わたしがやらなくちゃいけない復讐に二人を巻き込んじゃいけないから。

そんなことを考えている間に、わたしの目の前には大きな研究所。


『…入ろっか』
「ーー、」


一つ深呼吸をして、扉を開けた。



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bkm
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