泡沫の人魚姫 2


『〜〜〜♪』


グランドラインの深い深い海底を一人、優雅に泳ぐ影。
ニコニコと笑いながら綺麗なその歌声でその場にいる生き物を魅了して行く。

その声はどこまでも澄んでいて、かすかに地上まで聞こえるほど良く通る声だった。


「綺麗な歌声だねィ……」
「な!どっから聞こえんだろーなー?」
「なんか下から聞こえねェ?」


その真上にいた一つの海賊船はその歌声に魅了される。
そのまま海賊たちがうっとりと聞き惚れているとその歌声は突然止まった。

それに残念に思いつつも、この海域では不思議なことはよくあること。
そう思いつつ、海賊たちは各々の仕事に戻って行った。


「オラ、エース自分の仕事戻れ。」
「……おー。」


名残りおしそうに海を見つめるただ一人を残して。



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


えーっと…私、しらゆりもとい、ナマエは人攫いの人間に捕まっちゃいました。

ちょっと泳いでいただけなんですけどねぇ。
やっぱりシャボンディ諸島周辺は危険だったみたいですよーぅ。

まだ、13歳なのに奴隷になるのは辛いですねぇ。どうしましょうかぁ。

首には爆弾付きの首輪。唯一動かせそうな手には鎖。足は人魚だからビチビチと跳ねるだけで役には立ちそうにない。

はぁ…いざとなったら力を使うしかないですよねぇ…
目立つのは嫌なんですよぅ。


「ほら、出ろ!」
『っ、』


男は乱暴に私の首輪についている鎖を引っ張る。
息が詰まるじゃないですかぁ!
てゆうか、人魚なんですから水槽とかに入れてくれてもいいじゃないですかぁ。

そんなことを考えながら連れて来られたのは競売所の檻。
そこで、やっと私は水槽の中に入れられた。

でも、狭い。とても狭い。
ケイミーもこんな思いするんですねぇ。

未来のことを思い出すと何故か笑える。
ふふふ、と笑っているとヒューマンショップの人間に変な目で見られた。


「きょーうの目玉商品はとーっても珍しいあの商品!!!」

「深海では自由自在に泳ぎ、そのか細い喉から発せられる歌声は聴くものすべてを魅了する!海底の歌姫、人魚だぁぁぁぁあ!!!」



すると会場全体が盛り上がるようや声が聞こえた。
…人魚を奴隷になんかしてなにが楽しいのでしょう?
ただ、泳いだり歌ったりしかできないですのに。
まあ、奴隷を買おうという人の気持ちも理解できないんですけどねぇ。

次々と檻から出ていく奴隷たち。
その顔には絶望に包まれた人が多くて、

バクバクと心臓が高鳴った。

それをボーッと見ていれば何時の間にか私の番。

私が入っている水槽はカーテンを被せられる。
真っ黒でなにも見えなくなった。


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bkm
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