世界が一つになるまで 17


美朱Side

何か、大切なものをあたしは忘れてしまった。

目が覚めた時に私は学校にいた。
唯ちゃんのおかげで戻ってきたことが嬉しかった。

そのはずなのに、喜びよりも何かを忘れてしまったことへの焦燥感が大きかった。


お兄ちゃんに四神天地書のこととそれを言ったら、一つの名前がでた。


「名前?その子誰?」
「おまえ…それ、本気か?」
「お兄ちゃん、なに言ってんの?」



首を傾げて聞いたら、すごい力で肩を掴まれた。


「おまえの双子の妹だよ!本当に覚えてねぇのか?!」
「おっ兄ちゃんこそ、なに言ってんの!あたしに双子の妹なんていないよ!」
「マジかよ…、」


私の肩から手を離してがっくりとうなだれながら、そう呟いたお兄ちゃんが意味わからない。

名前?それが私の大切な人の名前なの?


次の日になって、私の双子の妹だという名前は帰ってこなかったらしい。
お母さんとお兄ちゃんが話してることを聞いてわかった。

なに、あたしに妹なんてドッキリとかじゃないの?

そう思っても、頭の片隅にはモヤモヤしたものが残ってた。


学校に行って、みんなと会っても気分は晴れない。

名前、名前。
言葉にすると、なんだか魔法の言葉のように落ち着く。なんでだろう。
名前が大切な人だから?


「なーに、妹の名前なんて呟いてんのよ!」
「このシスコン!」
「え、?あ、うん、ごめん?」


友達に馬鹿にされるけど、なんのことかわからない。

あたしに妹?わかんない。
あの不思議な世界で、あたしはなにを失ったの?

ぐるぐるとそんなことを考えていると、チャイムが鳴って、みんなが席につく。

そんな時でも、あたしの頭の中は名前一色。


「本郷唯!」


ぼーっとしていると、唯ちゃんの名前が呼ばれた。
ちらりと隣を見ても、唯ちゃんの姿はない。


「本郷唯……なんだ、欠席か。めずらしいな。」



ヘンだな…、
本の外で呼んでくれた時、元気そうだったのに。
昨日電話してもいなかったし…

まさか…なにかあったんじゃ、

そんなことを考えていると、みんなの不満そうな声。


「美朱、ほら!教科書しまって抜き打ちテストだって!」
「き…きねつきうどん?」
「テ・ス・ト!」


現実はこれだから。


頭の中では唯ちゃんと名前のいう女の子のことを考えながら、問題を解く。


「(……ちょっ…と、一問目はとばそうっと)」


カリカリとみんなの手が問題を解く中、ガクガクと身体が震える。

なんで、ど…しよう…、
みんなスイスイ解いてるのに、

全然、わからない…、


ぐるぐると考える中で、時間だけが刻一刻と過ぎていく。


助けて、助けて、
名前、助けて…!


『美朱ちゃん、』


ふと、隣には顔も知らない微笑んでいる女の子。


『大丈夫です。ちょっと驚いただけですから。私もついてますよ…、』
「名前……っ!」


何故だかわからない。
けど、この子はあたしにとって世界一大切な人で、


「…どうした夕城!」
「名前…、」

自然と名前が出た。

カタリと外へ飛び出す。
探さなくちゃ、あの子を探さなくちゃ。


きっと、あの子は本の中で一人でさみしがってる。
本当は人一倍寂しがりやなあたしの妹。

待ってて。すぐ、あたしが迎えに行くから、



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