世界が一つになるまで 16


暗い暗い記憶の底では、私は紅く染まっていた。
声を出そうとしても、ヒューヒューと息しか出てこない。
すごく痛くて、痛くて痛くて、

助けて…!

心の中で何回も何回も私は叫ぶ。
でも、その願いが聞き届けられることは決してなくて、

私の意識は新しい世界へ飛んだ。


『ん……』
《ごしゅじん?!めぇさめた!?》
『めーちゃ、?』


暗い記憶から目を開けると、そこにいたのはフワフワな毛並みを持った私の大切な子。

めーちゃんがいることが嬉しくて、苦しく、思わずそのままめーちゃんを抱き締めて声を押し殺して泣く。


『めーっちゃ、めーちゃんっ、』
《ごしゅじん…?どうしたの?だいじょうぶだよ?ぼくは、ここにいるよ?ねぇ、ごしゅじん?》
『ごめっ、なさ、もう少し、もう少しだけ…』


そう呟くと、めーちゃんは自由の効く頭を動かして私の涙を舐める。


《しょっぱい…》
『めーちゃん…、?』
《ぼくは、なきむしなごしゅじんのこと、だぁいすきだよ!だから、すっきりするまで、ないてもいいの。ぼくが、ぼくがいるから…》


そう言ってくれるめーちゃんに私は、すごく救われた気がした。

めーちゃんを腕に抱いて泣くこと数時間。
やっと私も涙が止まってきて辺りを見渡す。


『めーちゃん、ここどこ?』
《ここはね、えーっと、こうなんこくってところだって。ちょうはつがいってたよ!》
『(長髪って星宿のこと…?)そう。分かった。めーちゃん、ありがと。』
《ううん!…ね、ごしゅじんはこれからどうするの?》


その言葉にうーんと唸る。
私は、帰らなくちゃいけない。

お兄ちゃんの、美朱ちゃんのいるところに。

そのためには、この物語を早く終わらせなくちゃいけない。

きっと唯ちゃんはすでに青龍の巫女になってる。
私が何時間寝てたのかわからない。
でも、きっとなってるって言える。

なら私が出来ることは?
美朱ちゃんがいなくても出来ることなんてきっと少ない。

でも、私は自分のために、生きるために、

なんでもしなくちゃいけない。

そう決心した時、扉が開いて誰かが入ってきた。


「!あんた目ぇ覚めたのね!」
『貴方は…、』
《あ、オカマへんたいやろーだ。》
「うっさいわよ!チビ!この子が目が覚めたら知らせなさいって言ったじゃない!」


ギャーギャーと騒ぐ二人に苦笑いを送る。
なんで、二人ともこんなに仲が悪いんだろ。
もっと仲良くすればいいのに。

一通り終わったところで私は声をかける。
すると、二人は勢いよくこちらを振り向いた。


「それにしてもよかったわ。あんた一ヶ月も目を覚まさなかったのよ?」
『いっ、かげつ…』


その言葉に手を口に当てて、ぽそりと呟く。
私、そんなに寝てたなんて…


『あ、あの、』
「あ、あたしは柳宿。七星士の一人よ。よろしく。」
『ぁ…柳宿さん…、よろしく、お願いします…私は、結城名前です。美朱ちゃんの双子の妹です。』


ぺこりと、わざわざ自己紹介してくれた柳宿にお辞儀をした。


この時すでに私の知らない物語が始まっていたのを私は知らない。


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bkm
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