世界が一つになるまで 14


《ごしゅじん!どうしたの?》
『めーちゃんに頼みがあるんです。美朱ちゃんから、』

私の記憶をなくして

私がその言葉を一言紡ぐと、そこにいるすべての人が驚いたようだった。

だって、でも、それしか思い浮かばなかった。
本当は私の存在なんかなくて、美朱ちゃんは私なんかいなくても平気だった。
私は所詮はいらないの。
だから、世界から、私の記憶がなくなっても、私は、


「なに、言ってるの、?私から、名前の記憶を奪う?」
『ごめんなさい、ごめんなさい美朱ちゃん、私を忘れて、幸せになってください。だいすきです。』


ポロリと瞳から一筋涙が流れる。
きっと優しい美朱ちゃんは私なんかがいたら、安心して元の世界に戻れない。

美朱ちゃんが戻らないと、物語は進まない。

結局は私が帰るため。自分が元の世界に帰るために、私は美朱ちゃんが巫女だということを利用して。

なんて浅ましい人間なんだろう。


《本当に、いいの……?》
『めーちゃん、お願い。』
「名前、やめてよ、」
『美朱ちゃんだぁいすき、』


そうして美朱ちゃんは私の記憶をなくした。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


美朱Side

あたしには双子の妹がいる。
双子の妹ーー名前は頭が良くて、美人で優しくてとても愛おしい妹。
でも名前はあたしを、みんなを拒絶し続けた。名前が受け入れたのはお兄ちゃんだけ。それが悲しかった。

あたしだって名前が大事で大事で仕方ないのに。

好き、好きだよ。
あたしが名前のこと護るからね。

だってあたしと名前は双子だもん。


この世界に来たのは、お母さんからの反発からっていうのもあった。
でも、一番は名前が興味を示したから。

いつもは私の話に興味なさそうな名前が、あの日、四神天地書の話をお兄ちゃんにした時、名前が驚いたように体を動かした。

いつもは全然反応なんかしないのに。

だから、私は四神天地書には名前が私を受け入れない理由があるんじゃないかって思って四神天地書を開いた。

私たちがまだ幼い頃、名前は行方不明になったことがある。
それから何ヶ月か経ってから名前は何事もなかったかのように見つかった。

でも、それから。それから名前は私を避けるようになった。

だから、きっと四神天地書が原因だ。

なんでだかはわからない。
でも、確かにそんな確信があった。

だから、ここに来たのに。


「私から、名前の記憶を奪う?」


いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや絶対に、いや!!!

好きなのに、だいすきなのに、


「名前、やめてよ、」
『美朱ちゃんだぁいすき、』


その言葉と同時に、私の中から大切なナニカがなくなった。


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