世界が一つになるまで 13


めーちゃんと柳宿がなにか争っているのを横目に私は娘娘が用意してくれた着物のようなものを着る。
それは結構ラフなもので着物の着付けがちょつしか出来ない人でも簡単に着付けが出来るようなものだった。

それでも私だけで着付けるのは少しだけ難しくて、


『あれ…?』


少しだけじゃなくて大分難しかった。
着物と悪戦苦闘しながらとりあえず羽織ってみる。


『帯ってどうやるんだろう……?』
「私がやってあげよう。」
『え…?』


帯を持って頭に?を浮かべているとフワリと後ろから声とともに腕が伸びてきた。
私はいきなりのことに身体をビクリと震わせる。
すると、耳元で囁くように甘い声がする。


「怖がらなくていい。ただ着せるだけだ。間違っても変なことなどしない。」
『っ、ぁ…耳元で、喋らないで、くださ、い、!』


耳元で喋られるくすぐったさに顔が赤くなる。
それに、クスクスと笑う声。
恥ずかしくて後ろを向くと、そこには恐ろしいくらいに綺麗な顔をした星宿の姿だった。


『っ、ぁ…だ、れですか?』


私がやっと言えたのはこれだけ。
何故だかわからない。この人が恐いと思った。


「……あぁ、私は朱雀七星士の星宿だ。」
『そうです、か…。あの、あまり知らない人にやってもらうのもアレですから大丈夫、です。いざとなったら娘娘にやってもらいますから。』


恐怖に引きつりそうになる顔を無理矢理笑顔にしてそう答える。
すると、私の身体に巻かれていた星宿の腕の力が私を絞め殺すんじゃないか、ってくらいに強くなった。


『ぅぁ…』
「名前…」
『っ、』

ビクリと私の耳元で囁くように言う星宿にカッと耳まで熱くなる。
それにギュッと目をつむれば、何が気に入らなかったのか耳たぶを甘噛みされた。


『やっ、』
「私から目を反らすな…」
『ひっ…!』


そう言う星宿の瞳がまるで朱雀みたいで恐くて恐くて、思わず悲鳴が洩れた。


「名前、私はお前の記憶がないからといって思い出させようとはしない。だが、記憶がなくとも、私を拒むことは赦さない。」


やだやだ。私は知らないのに。記憶なんて知らない。
星宿は朱雀と一緒なの?
恐いよ。助けて。誰か助けて。


「名前!」
『ぅ、ぁ…みあかちゃ、』
「美朱…」


そう思った途端に、後ろから聞こえたのは私の片割れの声だった。


「星宿!名前になにするの?!」
「美朱には関係ないはずだが…」
「っ、関係ある!名前は私の妹だもん!」


美朱ちゃんはそう言って私を星宿から引き離して、私を抱き締めた。
私は驚いて美朱ちゃんを見る。美朱ちゃんは何故かすごく泣きそうな顔をしていた。


『み、あかちゃ?』
「名前も、名前も一緒に帰ろう?ね?」
『っ、』


その言葉に私は頷けない。
本当は今すぐに帰りたいのに。


「名前……?」
「美朱、名前は帰れない。今回帰るのはお前だけだ。名前、こっちに来るんじゃ。」
『はい……、』


すぐそばに太一君が来ていた。
太一君は美朱ちゃんにそう言うと、私に来るよう手招きする。
私は美朱ちゃんも、星宿も怖くて怖くて、
気がつけば私は美朱ちゃんの腕から抜けて、太一君の元に向かってた。


『ごめんなさい、ごめんなさい。美朱ちゃん。』
「な、んで…?」
「名前、めーちゃんを呼べ。あやつは記憶を操ることができる。」


太一君の耳打ちにコクリと頷くと、私はめーちゃんを呼んだ。


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