《ごしゅじん、だいじょーぶ?》
『うん……心配してくれてありがとうございます……』
《……っ、》
私はめーちゃんと一緒に太一君の前にある椅子に座る。
その間私が考えるのは最悪の事態ばっかで、もう二度と、お兄ちゃんに会えなくなったらどうしようとか、こんなことなら美朱ちゃんとも仲良くしておけばよかったな、そんなマイナスの感情しかできなかった。
「さて…」
『、わ、たし帰れますよね?元の世界に帰れますよね?』
「そのことなんじゃが…今のところお前は元の世界には帰れない。」
『っ、!』
なんでなんでなんでなんでなんでなんで!
帰れない?私が?無理矢理こんなところに生まれ変わって、本の中にも無理矢理連れてきて、
私に権利はないの?
《ごしゅじん…》
「悲観的になるのはまだじゃ。私は今、帰れないと言っただけで一生帰れないとは言っておらん。」
『!……どういう、ことですか?』
太一君の声は真剣そのもので、思わず私も息を飲んだ。
「お前が今ここにいるのは四神の力だ。特に、巫女を呼ぶ必要があった朱雀と青龍の力。もし、お前が帰れるチャンスがあるならば、それはお前の双子の美朱が朱雀を呼び出した時だろう…」
『それは、本当ですか、?』
カラカラと喉が枯れる。
それは、私が今まで避けていた原作を正面から受け止めなくちゃいけないということ。
それも本当に帰りたいのであれば死んじゃう人を助けるつもりで、
《ごしゅじん、ぼくがんばるよ》
『……え?』
《ぼくが、ごしゅじんてつだうから。ごしゅじんはひとりじゃないよ。だから、だからそんななかないで…》
めーちゃんの言葉に手で目元を触る。
そこには、冷たい何かがあった。
な、みだ……?
『っ!わ、たし…』
《ぼくね、ごしゅじんだいすき。あってみじかいけど、ごしゅじんはぼくじしんをみてくれた。それにぼくのことをまもろうとしてくれた。ほんとは、ぼくがまもらなくちゃいけないのに。だから、ぼくはごしゅじんだけをまもるよ。すざくさまたちが、ぼくとごしゅじんをあわせてくれたのはかんしゃしてる。でも、ぼくはごしゅじんをまもるためなら、すざくさまたちにだってさからえるよ。》
『めーちゃん…』
めーちゃんの瞳には私にでも分かるくらいの意志が見えて、
『めーちゃん、』
《なぁに?》
『私と、ずっと一緒にいてくれますか…?』
不安だった。
私と知り合う人すべてが美朱ちゃんのことを好きになるんじゃないか、って。
私自身を見てくれる人はいないんじゃないかって。
だって美朱ちゃんはキラキラ輝く主人公。
だから、私は原作にも美朱ちゃんの周りの人みんな関わりたくなかった。
でも、めーちゃんなら、って。
この子を信じたいって私は心の底から思ったの。
私の言葉ににぱっと太陽のような笑顔を見せるめーちゃんを見て、私はやっと一歩進めた気がした。
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bkm