人形劇 10


そこは私たちの考える世界とは違っていた。

まず、自分たちが生きるために人を殺すのが当たり前だった。
特に、私がいた場所は流星街と言われていて、そこはイラナイものが捨てられ場所。
イラナイものならなんでもいいの。人でも、赤ちゃんでも、死体でも、ゴミでも。
イラナイものを捨てても罪にはならない。
だから、そこは無法地帯だった。

私がクロロに拾われたのは、とても運がよかったんだよ。
クロロがいなかったら私は人を殺したりしてたかもしれないし、最悪死んでたかしれない。

クロロに拾われてから私はクロロの仲間とも会わされた。
みんな私によくしてくれた。
私を守ってくれた。
みんなが守ってくれたおかげで私は手を汚さずに済んだ。
まあ、みんなは手を汚しちゃったけど。

でも、そんな生活の中でも、私は自分が必要とされてるんだって感じられて、幸せだったんだ。

でも、やっぱり私は違う世界の人間だった。

あ、まずは【念】について説明するね!
【念】っていうのは人間にある生命エネルギーのことをいうの。
潜在能力ともいうかな?
それで、【念】には四大行っていって、基本となるのが四つ、纏、絶、練、発があるの。

まあ、これは覚えなくてもいいかな。
大事なのは発。
発っていうのは必殺技みたいなものでね。
人にあった必殺技があるの。

で、私が違う世界に行っちゃったのもそのせい。
あのピエロは念使いで、私を殺すために発を使って私を違う世界に行かせた。

そこまではわかる?

……仁王ちゃんが頭良くてよかった。


それでね、発は基本的に発を使った念使いが死ぬと発も終わることが多いの。
まあ、例外もあるけどね。
で、私は突然この世界に戻された。
きっとあのピエロが殺されたから。


でもそれは私にとって苦痛でしかなかった。


だって六年。六年もあの世界にいたのに、いきなり、こんな世界に戻されて。

私が戻った時に、見たのはピエロが手品を見せてくれたあの公園。
そこで私は呆然と立ち尽くした。

そんな私に気付いたのが幼馴染。
私に気付いた後の幼馴染の行動はそこから早くて、

まず、私の両親に電話。
その次に自分の両親。
警察には電話しないでくれた。

母親はね、私を見るなり発狂した。
そりゃそうだよね。死んだと思ってた奴がいきなり目の前に現れるんだもん。
でも、それでも、父親は私のことを抱き締めてくれたんだ。
私が帰ってきたことに泣いて喜んでくれた。

でもね、私が両親と一緒に住むわけにはいかなかった。
私がいない間にあの二人には子供がいたんだもん。私の弟。
それに、母親は私を見る度に叫ぶから。

父親は一緒に住もうって言ってくれたけど、私はそれを断って誰も知らないここに来た。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

一通り話すと私はニコッと笑う。


『それが私が一人で暮らしてる理由だよ!』
「名前ちゃんは悲しかったんか?」
『んん?なんで?』


首を傾けて仁王ちゃんの瞳を見る。
すると、仁王ちゃんは指でそっと私の目元に触れた。


「名前ちゃん、泣いちょる。」
『…あれ?』


仁王ちゃんの手に私の手を添えると、確かに私の目元は濡れてて、


『私、悲しいのかなぁ?でもさ、私、雅治といるの幸せだよ。だって雅治は私のこと必要としてくれるもん。』
「名前ちゃん……」
『たぶん、私はさみしかったんだよ。だってクロロたちは、血が繋がってる家族より長く一緒にいたんだもん。』



私がここにいたのは五年間だけ。
母親に殴られ、父親には恐れられた記憶しかない五年間。
それに比べてあっちにいた六年間は、優しい記憶しかなくて、クロロもパクもマチもヒソカも、みーんな私に優しくしてくれた。


「名前ちゃんはあっちにに戻りたいんか?」
『あはっ、それはありえないよ。だって、ここには雅治がいるもん。もし、次にあっちに行くとしたら雅治と行きたいな。』


たぶん、今の雅治は私がここにいる理由。
最初はただの暇潰しで助けただけだったのになぁ。


「そ、そうか。」
『?雅治顔真っ赤だね!かーわい!』
「名前ちゃん??!!!」


何故か顔が真っ赤な雅治。可愛いなぁ!
そう思って雅治に抱きつくと雅治はびっくりするくらい驚いていた。

うぁー。雅治に抱きついてると落ち着くー。


『んー…』
「名前ちゃ、ここで寝るんじゃなかよ???!!!」
『んんー……』


最後に雅治の声が聞こえたけど、私の意識はそのままブラックアウト。

その後、雅治が涙目で焦っていたことは私は知りません。


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