『マサキさん、本当にありがとうございました。』
匿ってくれてありがとうという意味でマサキさんに頭を下げる。
マサキさんがいなかったらきっとわたし、みんなにバレてた。
「別にええで。…ただなぁ、なんでそんなに逃げとるん?」
『そ、れは、』
マサキさんのその鋭い言葉に思わず言葉が詰まる。
そう。本当に巻き込みたくないなら、彼らに嫌われればいい。
黙って消えたのは嫌われたくなかったから。
…わたしのわがまま。
「逃げなくてもエエと思うで。ワイは名前ちゃんとおるだけで嬉しい。それはレッドとグリーンもゴールドたちだって同じやと思う。」
『レッドとグリーン…?』
「おん。あいつらも名前ちゃんが来る前にここに来よったわ。」
その言葉にやっぱりと思う。
二人はわたしを大切にしてくれてたから。
…意思が、足りないのかもしれない。
ちゃんと話し合わなくちゃいけないのかもしれない。
でも、臆病なわたしはそれが怖くて、ずっと後回しにしてるの。
そんなことを考えながら俯いて唇を噛む。
『っ、』
「…なぁ、名前ちゃん。」
『な、んですか?』
「辛くなったらここに来てええで。」
はっとして俯いていた顔をあげてマサキさんの顔を見る。
マサキさんは優しい顔で微笑んでた。
「ワイは名前ちゃん力になりたい。もし、名前ちゃんが他の奴らから指指される行為をしよっても、ワイは名前ちゃんを見捨てたりせぇへん。だからな、安心してワイのとこに帰ってきてええで。」
ポロリ、
優しい言葉に涙が零れる。
本当は怖かった。縋りたかった。
でも、それは赦されなくて。
わたしは復讐する。それは変わらない事実。
それでも、わたしは誰かに受け止めて、受け入れて欲しかった。
『っ、マサキ、さん。』
「なんや?」
『終わったら、全部終わったら話しますから、ここで待っててくれますか?』
「当たり前やん!」
マサキさんの言葉にわたしは泣きながら微笑んだ。
マサキSide
綺麗なその瞳から一筋の涙が零れる。
そんな名前ちゃんをそっと包みこむように抱き締めると、一瞬ビクリと反応しながらもワイを受け入れた。
あぁ、ほんまにかわエエわ。
名前ちゃんにワイに荷物を届けるようオーキド博士に頼んだんはワイ。
こんなことになるとは思ってなかったんやけど、結果オーライやわ。
名前ちゃんが手に入った。
初めて会ったんはレッドとグリーンが来た時。
そん時も名前ちゃんはビクビクと二人に挟まれっとてまるで小動物みたいやった。
最初はかわええ子やな、くらいにしか思わんかった。
けど、名前ちゃんの持つポケモンの知識と考え方。
ワイはそれにやられたんや。
名前ちゃんはなんでか知らんけどポケモンの知識がそこらの博士より、ぎょうさんあった。
例えば、○○っちゅーポケモンはぶつり攻撃が得意だとか、○○な性格のポケモンはどこが育ちやすいかとか。
育て屋でも知らんことがあったと思う。
ワイのつまらへんポケモンの話だって熱心に聞いとくれて、
ワイにはこの子が必要なんやって思った。
まあ、ワイと名前ちゃんが話しとると大抵はレッドとグリーンが睨んで来よったり邪魔してくるんやけど。
好きや、好きなんや。
名前ちゃんを抱き締めながらワイは嗤った。
名前ちゃん、名前ちゃん、
ワイは名前ちゃんを独占したりせんよ。
ただ、ワイのことを想ってくれるだけでええんや。
それがワイの【好き】の形
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bkm