リオンと一緒に草原を走る。
まるで何かから逃げるように。
早く、早く早く行かないと…!
ヒビキくんたちには内緒でコガネシティまで走る。
本当はシュリの空を飛ぶでコガネシティまで行こうとしたけど、それはバレやすい。
なら、走って行くしかない。
『…はぁッ……、』
「ーー?」
『だい、じょぶだよ、リオン。』
わたしを心配そうに見つめるリオンにニコッと笑う。
別にヒビキくんたちが嫌いで逃げてるわけじゃない。むしろ、好きな人たちだ。
でも、だからこそ。わたしはヒビキくんたちを巻き込みたくない。
これで、ヒビキくんたちを巻き込んだりしたらわたしがレッドたちから離れた意味がなくなるもん。
わたしは一人で大丈夫なんだから。
『ここまで来れば大丈夫かな?』
はぁーっと脱力しながらわたしはコガネシティに着いた。
でも、休んでるひまはない。
早く荷物をマサキさんに渡して、それからすぐに船で違う地方に。
きっと違う地方まで行ったらヒビキくんたちは来ない。大丈夫。
あぁ、でもレッドとグリーンは分からない。
自惚れじゃなければあの二人はわたしを大切に思ってくれていたから。
そんなことを考えながら足早にマサキさんの家に向かう。
急いで、急がないと…!
『ここ、だよね……?』
一軒の家の前で立ち止まる。
たぶん、わたしの記憶が正しければここ。
ちょっと迷ったけど、コンコンと扉を叩く。
すると、中から声がした。
「誰やー?」
『あ、あの、わたし、』
…あれ?なんて言えばいいんだろ?
ナマエです?お久しぶりです?
で、でも覚えてもらえなかったら危ない人だし…
どうしよう、と扉の前で立ち尽くす。
でも、それより早くに目の前の扉が開いた。
「ナマエちゃん?!」
『ぁ…マ、マサキさん、』
「久しぶりやなぁ!声だけでも分かったわ!」
入ってや!と言うマサキさんの勢いにびっくりして促されるままマサキさんの家に入る。
「で、今回はどうしたんや?」
『ぁ…あの、』
コンコン
わたしが話を切り出そうとすると、扉からコンコンと音が聞こえた。
その音に大袈裟にビクリと身体を震わせる。
どうしようどうしようどうしよう。
もしも、ヒビキくんたちだったらどうしよう。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い。
半分涙目になりながらわたしはマサキさんを見る。
マサキさんを見ても意味がないって分かってるのに。
「ナマエちゃん、ちょっとこっちにいてや。」
『ぇ…あ、』
マサキさんは私の手首を引っ張るとベッドのある部屋にわたしを閉じ込めた。
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bkm