三月ウサギ 15


それは麻薬のようだった。
一度触れたら離れられない。
一度聞いたら自分のためだけに囁いて欲しくなる。
五感全てで感じることのできる麻薬のような何か。

すべてを魅了するもの。



ヒビキSide

「ナマエさんがいなくなった……!?」


キキョウシティにあるポケモンセンターでコトネとクリスが焦ったように僕とゴールドに言う。
コトネにいたっては顔面蒼白だ。


「っ、なんでだよ!…やっぱり忠告だけじゃ足りなかったんじゃねぇの?」
「僕がしようとしたのを止めたのはゴールドだろ。…でも、ナマエさんも学習能力ないみたいだよね。」


イラついたように僕に話すゴールドに冷笑を送る。
心の奥底から出てくるドス黒い気持ち。
ムカつく、なぁ。
僕の言うことを聞かないなんて。


「どうしよ、どうしよっ、ヒビキ、わ、たし、もう、ナマエさんがいないと生きていけないよ、!」
「コトネ落ち着きなよ。僕だって同じなんだから。」


膝から崩れ落ちたコトネに笑いながら囁く。


「だいたいさぁ、ナマエさんは俺らから逃げられると思ってるのかなぁ?」
「思ってるから逃げたんだろ?」


クスクスクスクス、
ゴールドと一緒に笑いながら言葉を紡いでいく。
そんな俺たちの姿にあぁ狂ってるな、と思いながらも俺たちは笑う、嗤う。

ナマエさんは俺たちのもの。
ナマエさんが一人のものになるくらいならみんなで共有すればいいんだよね?


「なぁ、ヒビキ。」
「なに?ゴールド。」
「久々に俺と組まねぇ?」
「あ、俺もそれ思ってたところ。」


ゴールドと目を合わせてニヤリと歪んだ顔で嗤う。
俺とゴールドの顔はまるで鏡のようで、

歪んだ顔は俺とそっくりだった。


「クリス、クリスも協力してくれるわよね?」
「コトネ…」


ニッコリと涙の跡が残る顔で笑ってクリスに問いかけるコトネ。
そんなコトネをクリスは心配そうに見つめる。
やがて、はぁっとため息を吐くとコクリとうなづいた。


「クリスありがとう!」
「しょうがないからね…」


疲れきった顔でクリスは力無く笑う。
それにニヤリと笑いつつも、
俺はゴールドに二ッと笑いかけた。


「クリスも手伝ってくれるって。」
「当たり前だろ?とりあえず、準備は整ったな!」


そう言って二カッと嗤うゴールド。
その顔見るの久しぶりだな、と思いつつ俺はヒビキに嗤い返した。


ナマエさん。
これから貴女を迎えに行きますから愉しみに待っててくださいね?



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bkm
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