生きたかった。
ポツンと一人立ちすくむ部屋の中。
【私】は紅く染まっていて、
白い部屋に私一人が深紅に塗れていた。
立ち止まってはいけない。
すべては最後の舞台で決まる。そう、すべてが。
舞台は整い、わたしは出逢う。
登場人物は集結し、わたしは【私】の望みを叶えることが出来る。
それは幼い頃から見る夢。
【私】が死に、そしてこれが詩となってわたしの頭に流れる。
【私】の望みは復讐。すべてを巻き込んだ復讐。
でも、【わたし】は巻き込みたくない。レッドもグリーンも、ヒビキくん、コトネちゃん、ゴールドくんだって。
それに未だ逢っていない人たちも。
だから、離れる。すべてから。
わたしが巻き込むのは家族だけ。他の人は絶対に巻き込まない。
それがすべて。
わたしの存在意義。
だから、これ以上わたしに入って来ないで。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
目を覚ますと見知らぬ天井だった。
『……?』
ここがどこか分からないままキョロキョロと辺りを見渡す。
私の寝ていた横にはそっくりな寝顔をした二人がいた。
『……ごめんね…』
一言彼らに囁いてから私は静かにベッドから下り、ドアから出た。
ここにはいれない。
最後の土地に行かなくちゃ。
マサキさんに会ったらすぐに。
すべてが終わる舞台に、
ポケモンセンターから出てすぐにモンスターボールからシュリを出す。
「ーー?」
『シュリ、お願い。今すぐ、』
「どこに行くんですか?」
『っ、』
シュリにお願いしてとにかくここから、ヒビキくんたちから離れようとした。
でも、それはとても恐い瞳をしたヒビキくんに静かに制された。
…恐い?なんで?ヒビキくんは確かに笑ってるのに、
「ナマエさん?もう一回言いますよ?どこに、行くんですか?」
『ヒビキ、くん……』
「僕が聞いてるのは名前じゃないですよ。」
「オイオイ。ヒビキはいちいち恐ぇーんだって!もっと優しく出来ねぇのかよ。」
そう言ってヒビキくんの後ろから出てくるのはゴールドくん。
そんなゴールドくんにヒビキくんは眉を顰める。
でも、それも一瞬でヒビキくんはすぐに張り付けたような笑顔になった。
「ナマエさんを気絶させたゴールドには言われたくないよ。…で、ナマエさん。聞いてますか?」
「うっせー。つーか、ナマエさん顔面蒼白じゃないスかぁ。大丈夫ッスか?」
『だ、大丈夫だから…』
苦しい苦しい苦しい。
やめて、やめてやめてやめて。
『ぁ…』
「ねぇ、聞いてます?」
「あ、ヒビキだけズリぃ。」
そんなことを考えている間に二人はわたしのすぐ近くに来てて、
『っ、ごめんなさい。ちょっと外を見たかっただけなの。』
咄嗟に嘘を吐いた。
嘘をつかないとダメな気がした。
でも、それは確かに正解だったらしい。
ヒビキくんとゴールドくんはわたしの両隣りを占領して静かに暗く、甘い声で囁く。
「駄目ですよ。僕から逃げようとするのは。僕、ナマエさんに酷いことしてしまうかもしれませんから。」
「そうそう!ま、その時は俺が優しーく俺だけしか見えないようにさせてやるから。」
そう言って同じ顔で同じように笑う二人を見て、
わたしは、
誰かを憎むアリスが一人。
復讐を決意するアリスが一人。
すべてを巻き込む決意をするアリスが一人。
すべてを巻き込まない決意をするアリスが一人。
囚われたアリスが一人。
わたしは【私】のために私は【わたし】のために。
すべテを終わらセまショウ?
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bkm