自己紹介をしつつゴールドくんに連れて来られたのはマダツボミの塔のてっぺん。
そこから見る街はとっても綺麗で、
『……来て、よかったな。』
自分のしなくちゃいけないことも忘れてただそう思った。
綺麗で綺麗で、ゴールドくんのことも忘れて綺麗なこの景色に魅入っていた。
「……お姉さん、そんなにここ気に入ったんスか?」
『ぁ…!ご、ごめんね、ゴールドくん!……とっても綺麗で魅入っちゃった。とっても気に入ったよ。連れてきてくれてありがとう。』
わたしはそう言ってにっこりと笑う。
また来たいなって思った。
わたしが死ぬ前にもう一度だけここに来たいな。
「ふーん。それはよかったスねー。」
『うん。』
景色に見惚れすぎてて気付かなかった。
ゴールドくんの目が、口が、歪んでることに。
「そういえば。」
『?なぁに?』
「お姉さんはヒビキとどこでどうやって知り合ったんスか?」
いきなりそんなことを聞くゴールドくんに首を傾げつつも景色からゴールドくんに視線を移して素直に答える。
『わたしね、いろいろあって今からマサキさんっていう研究者?の人に会いに行くんだ。でね、ウツギ博士のところにマサキさんに届ける荷物を取りに行った時に、ヒビキくんに会ったの。』
マサキさんって研究者なんだっけ?
そんなことを考えながらゴールドくんに話す。
すると、ゴールドくんはだんだんとわたしに近づいてきた。
「ね、ナマエ…だっけ?あのさ、ヒビキのこと好きなのか?」
『ご、ごーるどく、ん?どうしたの、?近いよ…それに、』
目が笑ってない……
それに口調も変わってる…、
それが恐くてわたしはジリジリと近寄ってくるゴールドくんから後ずさりする。
「俺さぁ、ヒビキって好きじゃねぇんだよな。俺のが先に生まれたのに俺のこと弟呼ばわりするし。」
『っ、』
じゃぁ、ゴールドくんの方がお兄さんってこと…?
でも、最初に会ったとき弟がいるって言ってなかったっけ…?
「それによぉ、あいつ俺のこと馬鹿にしてんだよな。自分が天才だからってよ。」
『ご、るど、く、』
わたしの後ろはとうとう壁。
もう逃げられない。
ゴールドくんはそれに気付きニヤリと口を歪ませる。
「で、考えたんスよ。」
『な、にを、?』
わたしの言葉にまるで待ってましたというように嗤う、嗤う。
「どうやったらヒビキを負かせられるかって。」
その言葉と同時にわたしの体はゴールドくんに押し倒されていた。
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bkm